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腸炎ビブリオによる食中毒は、サルモネラとともに日本では最も発生頻度の高い食中毒のひとつです。この菌は1950年、大阪府下で発生したシラス食中毒事件の時に日本で発見されました。
この菌は3~5%の塩分を好み、海水に棲息しています(好塩性)。また、海水温が20℃を超えると活発に活動・増殖し、魚介類に付着します。このため、沿岸などで海水温度が高い時期に獲れた魚介類には、腸炎ビブリオが多く付着しています。
他の細菌に比べて増殖が極めて速く、約10分で2倍に増えます。発育に最適な環境においては魚介類から器具、器具から食品へと、どんどん増殖して広がっていきます。したがって、漁獲後や流通過程や調理中などの不適切な取扱いにより食中毒を引き起こします。まな板や調理器具を介した二次汚染による食中毒にも注意が必要です。
真水(水道水)の中や4℃以下では増殖できません。また、熱には弱く通常の加熱調理で簡単に死滅してしまいます。
この菌による食中毒の発生時期は、5~6月から次第に増加し7月から9月の夏場に集中します。しかし、最近では東南アジアなどからの輸入魚介類により、冬場でも腸炎ビブリオによる食中毒がみられます。
原因となる食品
魚介類の刺身やすし類が代表的なものです。また、生の魚介類を調理した後、調理器具や手指などを介して二次汚染された野菜の一夜漬け等も原因食品となります。
症状
腸炎ビブリオに汚染された食品を食べてから、6~24時間(早いものでは3時間程度)で発症します。主な症状は、水のような下痢と激しい腹痛です。吐き気・嘔吐や発熱などを伴うこともあります。
検査と診断
夏季の大人の食中毒患者で、おおよそ10〜30時間(潜伏期)前に海産魚介類(とくに生)を食べていれば、この食中毒の疑いが濃いといえます。 しかし、症状からだけでは他の食中毒と区別するのは難しく、確定診断にはTCBS寒天培地など、この菌を分離しやすい培地で菌を検出します。分離された菌がTDHTRHの産生能をもっているかどうかを調べることで、病原性を有する菌か否かを判定します。
治療
対症療法が中心です。下痢止め薬は用いないほうが無難です。抗生物質は病期を短縮するといわれていますが、十分な根拠はありません。多くの患者さんは数日で快方に向かいます。しかし、まれに死亡することもあるので、十分な注意が必要です。
予防
腸炎ビブリオは真水と熱に弱く、低温では増殖できません。また、低温で腸炎ビブリオの増殖は抑えられるものの、凍結しても短期間では死滅しません。したがって、以下のことを徹底することで予防することができます。