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ウェルシュ菌(Clostridium perfringens )はヒトや動物の大腸内常在菌であり、下水、河川、海、耕地などの土壌に広く分布します。ヒトの感染症としては食中毒の他に、ガス壊疽、化膿性感染症、敗血症などがあります。ここでは、最も多いウェルシュ菌食中毒に関して説明します。この菌による食中毒はエンテロトキシン産生性ウェルシュ菌が大量に増殖した食品を喫食することにより、菌が腸管内で増殖し芽胞を形成する際に生産・放出するエンテロトキシンにより発症します。
ウェルシュ菌は酸素のないところで増殖し(嫌気性菌)芽胞を作ります。芽胞は非常に熱に強い性質をもち(耐熱性)、100℃で30分間加熱しても死滅しません。さらに、再加熱により芽胞の発芽が促進され、同時に食品内に含まれている酸素が追い出されてウェルシュ菌の発育の好条件となります。また、至適発育温度が43~47℃と他の細菌より高く増殖速度も速いため、加熱調理食品が冷却している間にウェルシュ菌は急速に増殖します。たとえば、寸胴鍋などで食品が大量に加熱調理された後、鍋に入ったまま数時間から一夜食品が室温に放置されていると、生き残った耐熱性のウエルシュ菌が増殖し毒素(エンテロトキシン)を産生します。この毒素が原因となり食中毒症状を引き起こします。
食中毒の発生件数は上位ではありませんが、一度に大量の食事を調理した給食施設などで大規模で発生する特徴があり、「給食病」との異名もあります。
原因となる食品
多くは肉類、魚介類、野菜およびこれらを使用した煮物です。
発生原因施設でみると飲食店、仕出し屋、旅館などの複合食品によるものが多くみられます。また、学校などの集団給食施設による事例も比較的多く、カレー・シチュー・スープ・麺つゆなどのように、食べる日の前日に大量に加熱調理され、大きな器のまま室温で放置されていた食品に多く見られます。
「加熱済食品は安心」という考えが、ウェルシュ菌による食中毒の発生原因となっているようです。逆に、家庭での発生は他の食中毒と比べて少ないことも特徴です。
症状
潜伏時間は約6~18時間で、ほとんどが12時間以内に発症します。腹痛、下痢が主で、特に下腹部がはることが多く、症状としては軽い方です。
予防
ウエルシュ菌は食品中である程度の数まで増殖しないと、食中毒は発生しません。ウエルシュ菌食中毒を予防するには、菌の増殖を抑えるとよい訳です。また、ウエルシュ菌は酸素を嫌い、耐熱性の芽胞を持つという特徴があります。加熱調理食品は小分けするなどして、急速に冷却し低温で保存することを心がけましょう。