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カンピロバクター腸炎

 

 

カンピロバクター腸炎とは

 

 カンピロバクターは、古くからウシやヒツジなどの家畜で流産や腸炎を引き起こす菌として知られていましたが、1970年代に入って、ヒトにも腸炎を引き起こすことがわかりました。カンピロバクター腸炎の原因菌は大部分がカンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni )で、残りはカンピロバクター コリ(Campylobacter coli )だと言われています。カンピロバクターはらせん状桿菌で、片端あるいは両端に1本の鞭毛をもっています。位相差顕微鏡では特有のらせん運動が観察され、発育には低い酸素濃度(微好気条件)を要求する微好気性菌です。なお、Campylobacter ;カンピロバクターとは「彎曲した菌」、jejuni ;ジェジュニとは「空腸」を意味します。

 

 カンピロパクター家畜肉食用動物(家禽※)や、牛、羊、豚)やペット(小鳥、犬、猫)、野生動物・野鳥等あらゆる動物の腸管内に棲息しています。しかし、これらの動物に腸炎を起こすことはありません。カンピロバクターに感染し腸炎などの症状が現れるのは人間のみです。多くの場合、生あるいは不十分な加熱で調理された食品の摂取、あるいは感染した動物との接触により人に感染します。

 

 保菌率は牛では数%~40%、家禽※)では50~80%にも及び、汚染された家禽の肉を不十分な加熱で調理された状態で食べたことによる感染が最も多いとされています。その他、滅菌されていないミルクや生水の摂取、感染しているペットとの接触、途上国への旅行なども感染経路となります。この菌の感染力は強く、食中毒発症に必要な菌数は100個前後です。

 

 食肉、特に鶏肉はカンピロバクターに汚染されていることが多く、食中毒の主要な原因食品となっています。カンピロバクター食中毒は食中毒全体の約20%を占め、腸炎ビブリオやサルモネラと並んで、最も頻度の高い食中毒の一つです。カンピロバクターは低温に強く、冷蔵庫内でも長期間生存することから、生食肉と他の食品の接触を避け、また、生食肉は十分に加熱調理することが感染防止に重要です。

 

 この菌はらせん状をしたグラム陰性の細菌で好気的には発育せず、嫌気的にもほとんど発育しません。酸素が3~15%程度含まれる微好気的条件で良く発育し、酸素に暴露されると急速に死滅します。そのため、感染源の特定は困難とされています。

 

 カンピロパクターによる食中毒は1989~1996年において年間20~40件発生しています。この食中毒は飲用水の細菌汚染が原因となった場合、大規模な事件となることが多いといわれています。

 

 

※)家禽(かきん):その肉・卵・羽毛などを利用するために飼育する鳥の総称。または野生の鳥を人間の生活に役立てるために品種改良を施し飼育しているものをいう。また、ペットとしての鳥を家禽として扱う場合がある。

 一般的に肉、卵用にニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、愛玩用にオナガドリ、チャボなどがある。またハトは、その帰巣性を利用してレース鳩や伝書鳩としても用いられる。最近はダチョウ、エミュー、キジ、ホロホロチョウなどを家禽として飼育する例もある(Wikipediaより)。

 

 

原因となる食品

 

 主な原因食品は鶏肉です。生(鶏刺し)や加熱があまりなされていない鶏タタキ、加熱不十分なバーベキュー・鶏鍋・焼き鳥などです。さらに、鶏肉から調理過程の不備で2次汚染された食品なども感染源となります。牛レバーの生食が原因になることもあります。

 

 井戸水、湧水、簡易水道水など消毒不十分な飲用水が感染源となることもあります。菌を持っている動物の糞に汚染される可能性があるためです。 生の肉に使った包丁で切った調理済みの食品も原因になります。子どもはペットからこの菌に感染することがあります。

 

 

 

症状

 

 潜伏期間は2~5日(通常2~3日)で、時に10日程度と他の食中毒と比べて長い特徴があります。主な症状は発熱・吐き気・嘔吐・腹痛・筋肉痛など前駆症状から始まり、数時間から2日後に下痢が出現します。下痢は1日10回以上に及び、1~3日続きます。腹痛は下痢よりも長期間継続し、発熱は38℃以下が普通です。ときに、便に血が混じる(血便)こともあります。乳幼児や高齢者、抵抗力の落ちている人では症状が重くなることがあります。

 

 この菌に感染し下痢症状が始まった後1~3週間して、ギラン・バレー症候群といって急速に進行する四肢の筋力低下をきたすことがあります。国内ではギラン・バレー症候群の約30~40%がカンピロバクター感染症を原因と考えられています。カンピロバクターは麻痺性疾患との関連もある重要な病原菌であることを再認識し、感染防止対策を講じなければなりません。

 

 

治療

  

 特別な治療を行わなくても自然治癒する場合が多いため、水分補給や食事療法などの対症療法が基本となります。

■対症療法

 下痢と発熱に伴う脱水に最も注意が必要です。経口補水液やスポーツドリンクなどで、こまめに水分補給をして下さい。経口摂取が不十分か脱水の程度によっては、点滴による輸液治療が必要となることがあります。食事は症状が安定するまで極力控え目にして、消化のよいおかゆなどを中心にして下さい。

 

■薬物療法

 下痢止めは原則として使用しません。下痢止めにより菌の排出が遅れるためです。消化機能と腸内環境回復のために消化薬や整腸剤を用います。

 ただし、症状が強く重症化が懸念される場合にはマクロライド系の抗菌薬による治療を考慮します。

  • 特別な治療を行わなくても、自然治癒する場合が多く、水分補給や食事療法などの対症療法が基本
    • 脱水にならないように、こまめな水分補給や必要によっては点滴を行う
    • 食事は症状が安定するまで極力控え目にし、消化の良いおかゆなどを中心にする
  • 症状が強く、重症化が懸念される場合にのみマクロライド系やテトラサイクリン系の抗菌薬による治療を考慮する
    • ニューキノロン系抗菌薬に対して耐性菌が増えており、治療選択順位の上位には来ないと考えられている
    • 下痢止めは経過を悪化させる場合もあるために使用しない
    • 消化機能と腸内環境回復のために消化薬や整腸剤を用いることもある
  • 症状が強く、重症化が懸念される場合にのみマクロライド系やテトラサイクリン系の抗菌薬による治療を考慮する
    • ニューキノロン系抗菌薬に対して耐性菌が増えており、治療選択順位の上位には来ないと考えられている
    • 下痢止めは経過を悪化させる場合もあるために使用しない
    • 消化機能と腸内環境回復のために消化薬や整腸剤を用いることもある

 

 患者の多くは自然治癒し特別治療を必要としないことが多い。しかし、重篤な症状や敗血症などを呈した患者では適切な化学療法が必要となる。第一選択薬剤 としては、エリスロマイシン等のマクロライド系薬剤が使用される。セフェム系薬剤に対しては自然耐性を示すため治療効果は望めない。ニューキノロン系薬剤に対しては近年耐性菌が増加しており、世界的な問題となっている。

 

 本菌感染症の予防は、食品衛生の面からみると、他の細菌性食中毒起因菌と同様に、獣肉(特に家禽肉)調理時の十分な加熱処理、また、調理 器具や手指などを介した生食野菜・サラダへの二次汚染防止に極力注意することである。また、本菌は乾燥条件では生残性が極めて低いことから、調理器具・器 材の清潔、乾燥に心掛けることも重要である。一方、食品の嗜好面から は、生肉料理(トリ刺し、レバ刺し等)の喫食は避けるべきであろう。その他、イヌやネコ等のペットからの感染例も報告されており、接触する機会の多い幼小 児及び高齢者等に対して啓発を図ると共に、ペットの衛生的管理が必要である。

 

 

 

予防

 

 カンピロバクターは食材のなかでは鶏肉や牛レバーから最も高率に検出されます。また最近では、この菌による食中毒は家庭内での調理よりも、飲食店バーベキューなどでの発生率が高くなっています。したがって、飲食店やバーベキューなどでは「生焼け」を避け、十分加熱して食べる様にしましょう。そして、家庭内では次のことに注意しましょう。

 

  • 生あるいは加熱不十分の鶏肉や内臓肉を食べることは控える。
  • 熱や乾燥に弱いので、調理器具は使用後によく洗浄し、熱湯消毒して乾燥させる。
  • 食肉からサラダなどへの二次汚染を防ぐために、

①    生肉を扱う調理器具と調理後の料理を扱う器具は区別する。

②    包丁やまな板を使うときは、先に生野菜などの食品を切り、生の肉はあとで切る。

③    生の肉に使った調理器具は、使い終わったらすぐ洗う。熱湯をかけると消毒効果があがる。

④    または、包丁やまな板と調理済みの食品がふれないようにする。

⑤    生肉を扱ったあとは手指を十分に洗浄する。

⑥    生肉を保存する場合は、冷蔵庫内で生の食肉と他の食品との接触を避ける。

  • 未殺菌の飲料水(野生動物の糞などで汚染される可能性のある井戸水、沢水など)を飲まない。
  • 小児ではイヌやネコなどの保菌動物への接触で感染することもあるので、便などに触らない。