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頭痛の原因は様々です。素人判断では危険な場合があります。
まずはご相談を!
薬物の使用過多による頭痛(MOH) |
■薬物の使用過多による頭痛とは
薬物の使用過多による頭痛(medication overuse headache、MOH)とは、以前からの片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛を持つ患者さんに使用薬剤過多に関連して新しいタイプの頭痛が発生した状態、または以前から存在する一次性頭痛が著明に悪化した状態をいいます。分かりやすくいうと、もともと頭痛持ちであった人が鎮痛剤を使いすぎてしまい、さらにその鎮痛剤を服用し続けることにより、逆に頭痛がおきてしまう状態のことです。以前は「薬物乱用頭痛」と呼ばれていました。しかし、「違法薬物の乱用」と紛らわしいため「薬物の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」と改称されました。
以下の場合、MODといえます。
①以前から1カ月に15回を超える頭痛がある
②頭痛に対して1カ月10日もしくは15日以上、3カ月を超えて定期的に薬を服用している
■薬物の使用過多による頭痛の発生機序(悪循環)
頭痛薬を常用していると脳などの中枢神経での痛みに対する感受性が変化し、痛みに過敏になり、ちょっとした刺激でも強い痛みを感じるようになります。また、痛みの性質や痛みがでる場所が変化するなど頭痛が複雑化し、次第に頭痛が起こる回数が増えて痛みも強くなり、薬が効きにくなっていきます。患者さんにはその原因が薬剤によるものであるということは分かりません。患者さんは、またあの嫌で辛い頭痛が始まるという不安のため、ついつい自己判断で薬を飲んでしまいます。さらに、過去に頭痛時に服用した鎮痛剤が有効であったという成功体験も加わり、次第に頭痛薬を飲む頻度や量が増えていきます。その結果、さらに頭痛が悪化し頭痛薬服用の頻度・量が増えるという悪循環に陥ります(図1)。
■MOHの原因薬物
MODはあらゆるタイプの鎮痛剤(痛み止め)でおこります。すなわち、医師の処方する薬以外で、一般の薬局で販売されている薬でもおこります。例えば、風邪薬や腰痛や生理痛に対する痛み止めです。これらの薬を1カ月に10日以上もしくは15日以上服用する容易にMOHに陥ってしまいます。
しかし、幸いなことに、頭痛持ちでない人が鎮痛薬を長期間服用していてもMOHにはなりません。例えば、慢性関節リウマチ(リウマチ)や腰痛などで抗リウマチ薬や鎮痛剤を長期間服用していても、(頭痛持ちでなければ)MOHは発生しません。
「若い頃から頭痛持ち。以前は発作性の頭痛が生じ、鎮痛剤で治っていた。しかし時が経つにつれて薬の効果が失われてきた。そこで薬を変更したり、増量したりするが効果は限定的でスッキリしない。頭痛の性状も変わってしまい連日連夜スッキリしない。頭痛が怖いので、不安から鎮痛剤を服用してしまう。起床時から頭痛があり、鎮痛剤を毎日内服してしまう」このようなエピソードはMOHを強く疑います。ほぼ毎日頭痛が認められ、ほとんどの例が起床時から頭痛に悩んでいます。頭重感、しめつけ感が持続する上に、時折発作性の激しい頭痛が種々の頻度で入り混じるような複雑な頭痛です。部位は一定していません。ほとんどすべての鎮痛剤が効かないか、乱用中の鎮痛剤のみがごく短時間有効といった状態になります。そのため日常生活は大きく制限されています。
頭痛外来ガイド 新興医学出版社 2022年1月 丹羽潔、武藤芳照 著より 一部改変
※1)睡眠時無呼吸症候群、睡眠時周期性四肢運動、むずむず脚症候群、COPD(閉塞性慢性肺疾患)などでも起床時の頭痛が特徴
※2:ロキソニンSという市販薬(OCT)もある
上記のうち4つ以上当てはまれば、MODの可能性が高いと考えられます。
気になる方、心配な方はご相談ください。
即時中止:トリプタン、エルゴタミン(ジヒデルゴット)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、複合鎮痛剤、単純鎮痛剤は重度の離脱症状は引き起こさないため即時中止が勧められる。
漸減中止:バルビツーツ、ベンゾゼジアゼピン、オピオイドでは漸減中止が勧められる。
MOHの原因の頭痛が片頭痛の場合は予防薬としてバルプロ酸(デパケン)、プロプラノロール(インデラル)、アミトリプチリン(トリプタノール)、ロレメジン(ミグシス)が選択肢。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連製剤は原因頭痛が片頭痛の場合は有望視されている。