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サルモネラ腸炎

 

サルモネラ腸炎とは

 

 サルモネラは主にヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌の一種であり、その一部はヒトや動物に感染して病原性を示します。ヒトに対して病原性を持つサルモネラ属の細菌は、腸チフスやパラチフスを起こチフス性(チフス菌とパラチフス菌)と、感染型食中毒を起こす非チフス性(食中毒性サルモネラ)に大別されます。

 

 食品衛生の分野では後者にあたる食中毒の原因となるサルモネラを、特にサルモネラ属菌と呼んでいます。一般には、これらを指して狭義にサルモネラあるいはサルモネラ菌と言います。

 

 サルモネラは自然界のさまざまな環境に棲息しています。とくに、ニワトリ、ウシ、ブタなどの家畜の腸管内に棲息しており、これらの動物から生産される食品が、その糞便などを介して汚染され食中毒をおこします。 また、ネズミや犬・猫などのペットなども保菌しており、これらを介して食品が汚染されることもあります。

 

 サルモネラには2,500種類以上もの血清型が知られています。これらの中でも特に鶏卵を原因とするサルモネラ・エンテリティディス(以下、SE)による食中毒が近年急激に増加しています。

 

 現在、わが国でもサルモネラ食中毒の60~70%がSEによるもので、鶏卵を原因とするものが大半を占めています。さらに、これを原料とした生菓子などの2次汚染による食中毒も年々増加しています。

 

 鶏卵のサルモネラ汚染は、かつては鶏の消化管内に寄生したサルモネラが、産卵時に卵殻の外側を汚染するためと考えられていました。そのため、汚染防止には鶏卵の洗浄が有効でした。

 

 しかし、今日では鶏卵内部の汚染が問題になってきています。鶏卵内部へのサルモネラ汚染は主に2つの経路があります。1つは、産卵後、親鶏の便に汚染され卵殻を通じて、外部から卵内へサルモネラが侵入する場合。もう1つは、親鶏の卵巣に保菌されていたサルモネラが卵黄に付着したまま排卵され、産卵された時点ですでにサルモネラが卵内に存在する場合です。最近は、後者の割合が増加しています。

 

 したがって、鶏卵内部にSEが存在する可能性を念頭において、①購入した卵は冷蔵庫で保存する、②卵の割り置きは絶対にしないなど、卵の取扱いには十分気をつける必要があります。

 

原因となる食品

 

 サルモネラによる食中毒の原因食品の大部分が、卵やその関連食品です。菌の発育温度は10℃以上、特に20℃以上になるとよく増殖し、発育至適温度は37℃位とされています。しかし、熱には弱く十分な加熱で死滅します。したがって、生たまご、オムレツ、玉子焼き、自家製マヨネーズなど鶏卵を原料とし、十分な加熱工程のない食品が原因となっています。

 

 また、卵から調理器具や手指を介して、他の食品が二次汚染を受けることもあります。

 

 

 

症状

 

 汚染した食品を摂取してから8〜48時間位の潜伏期を経て、急性腸炎として発症します。まず、悪心(吐き気)や嘔吐で始まり、数時間後に腹痛や下痢をきたします。1日10~20回以上の激しい下痢のことが多く、ひどくなると血便が見られることもあります。

 

 発熱をきたす場合は38℃以上の高熱をきたすことが多く、細菌性腸炎の中では最も重症とされています。その理由として、菌は腸粘膜深く(粘膜下層)まで侵入するためであり、小児や高齢者では合併症(菌血症、腎不全、髄膜炎、骨髄炎など)のために死亡することがある。

 

 

 

 

診断

 

 症状から感染を疑いますが、サルモネラ食中毒と確定するには、実際に患者さんの糞便などから原因となっている菌を分離することが必要です。

 

 また、原因となった食品を見つけるために、何を食べたかを調べることも重要です。

 

 

治療

 

 感染初期や軽症の場合は整腸剤や補液による対症療法を行います。しかし、重症化した場合は抗菌薬(ニューキノロン系)を1週間投与します。菌によっては耐性を獲得して抗菌薬が効きにくい場合もありますので、注意が必要です。下痢の回数が多くても、下痢止めは排菌を阻害するため使用しません。

 

予防

 

  • 鶏卵は新鮮なものを購入すること。また、購入後は必ず冷蔵庫に保管し、短期間に消費すること。
  • 卵の割り置きは絶対にやめること。
  • 加熱調理する場合は中心部まで火が通るように十分に加熱すること。目安は卵黄も卵白も固くなるまで。
  • 鶏卵などを取り扱った器具、容器、手指はそのつど必ず洗浄消毒すること(二次汚染防止)。
  • 卵を生や半熟で食べる場合は、必ず生食用の卵を使い、できるだけすみやかに食べるようにすること。
  • 乳幼児や高齢者(ハイリスクグループ)には、加熱の不十分な卵料理は提供しないようにすること。
  • 調理器具はよく洗浄し、熱湯などで消毒すること。
  • ペットに触れた後は、十分に手洗いすること。
  • ネズミ、ゴキブリなどの駆除を実施すること。