>医療法人 啓眞会 くにちか内科クリニック

百日咳

 

       しつこい咳が何日も続く    

          

 

 

 

 

 

 

 

 

  百日咳とは

 

 百日咳(pertussis, whooping cough )は百日咳菌の感染によって引き起こされる呼吸器感染症で、強い咳が長く(百日も…)続くことから名づけられた。患者の咳やくしゃみなどの分泌物中に含まれる百日咳菌を吸い込むこと(飛沫感染)や、手で触れること(接触感染)により感染する。

 

 小児では特有の痙攣性の咳発作がある。成人ではこの様な痙攣性咳発作は稀で、長期間続く咳や発作性の咳だけのことが多い。そのため、感染初期は風邪など他の疾患と区別するのが困難。その結果、感染に気付かず感染源となり家族内感染集団感染を起こすこともあり注意が必要。

 

 百日咳菌の感染力は非常に強力で、予防接種を受けていない家族間の接触では80~100%に感染する。さらに、予防接種を受けている家族間でも20%に感染する。

 

 母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が期待できないため、乳児期早期から罹患する。1歳以下乳児、特に6か月未満では死に至る危険性もある。したがって、百日咳患者は小児、特に乳幼児への感染源とならないよう注意が必要。

 

 従来は乳幼児・小児期の疾患と考えられていた。しかしあらゆる年代の人に感染する。最近は成人での感染が増加している。半数以上が成人という報告もある。

 

 長引く咳の患者では、小児の30~40%、成人の20%は百日咳という報告もある。

 

 潜伏期カタル期痙咳期 咳発作は夜間に強くなることが多く、睡眠が妨げられる。発熱はないか、あっても微熱程度。 激しい咳発作は強さや回数も徐々に回復する。咳がおさまるまで2~3カ月続くこともしばしば。その後、半年位は風邪などで発作性の咳が出ることがある。 

 

 

百日咳の症状と経過

 

 潜伏期

 百日咳に感染して7~10日間(5日~3週間)は無症状。

 

■カタル期

 鼻水・涙目、咳、微熱など通常のかぜと区別のつかない症状で始まり、徐々に進行し咳の回数・程度も激しくなる。したがって、この時期は通常の風邪や気管支炎と見分けがつかない。

 

■痙咳期

 次第に症状が強くなり、発作性の咳が出るようになる。発作性で痙攣性の咳(発作性痙咳)、短い咳が連続的に起こる(スタッカート)、吸気時にヒューという音が出る(吸気性笛声)、咳嗽発作がくり返す(レプリーゼ)とも表現される。咳発作の後、しばしば嘔吐することもある。ただし、前述の様に痙攣性の咳発作は成人では認められないことが多い。

 咳発作は夜間に強くなることが多く、睡眠が妨げられる。発熱はないか、あっても微熱程度。

 

■回復期

 激しい咳発作は強さや回数も徐々に回復する。咳がおさまるまで2~3カ月続くこともしばしば。その後、半年位は風邪などで発作性の咳が出ることがある。 

 

 

合併症

 

 小児では肺炎や百日咳脳症、中耳炎、無気肺、気胸、脱肛、鼠径ヘルニアなどの合併症がしばしば認められる。乳幼児ほど合併症を伴いやすく重篤となりやすい。したがって、百日咳患者は他人、特に乳幼児への感染源とならないよう注意が必要。

 

 

診断
  • 典型的な百日咳の症状がある場合は必ずしも困難ではないが、初期(カタル期)では困難。
  • 周辺の流行状況や患者・小児との接触歴も重要。
  • 年長の小児や成人の場合は、症状だけでは診断は困難。鼻咽頭分泌部の細菌培養検査や血液検査(血清学的検査)が必要となる。

 

 

治療・予防
  • 日本では百日咳ワクチンの接種は小児期の三種混合ワクチンとして計4回接種で行われている。
  • ワクチンの効果は生涯持続しない。早ければ5年くらいでワクチンの効果は半減。10年位で消失するといわれている。
  • そのため、欧米では成人のワクチン再接種が行われている。しかし、日本では未対応。
  • 百日咳菌には、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が有効。
  • 抗生剤は初期(カタル期まで)は症状軽減に有効。カタル期を過ぎると症状軽減の効果はない。しかし、周囲への感染伝播を防ぐことが目で使用される。
  • したがって、咳が軽快または消失しても、医師が指示した期間は抗生剤の服用を止めてはいけない。抗生剤は飲み切ること! その期間は最低でも5~7日間(クラリスロマイシンの場合)。
  • 菌の排出は咳の開始から約3週間持続する。適切な抗生剤の治療により服用開始から5~7日後には菌の排出はほぼ陰性となる(クラリスロマイシンの場合)。
  • 頑固な咳には飲み薬や張り薬を使用する。通常はあまり効かない。喘息の時に使用する「吸入薬」も併用する。

 

 

医療機関で百日咳と診断されたら
  • 学校保健安全法(*)では「特有の咳が消失するまで出席停止」となっている。ただし、病状により伝染の恐れがないと認められたときはこの限りではない。
  • 百日咳と診断されたら、まず学校に連絡し、その指示に従うこと。
  • マスクを着用するとともに咳エチケットを守り、咳やくしゃみをした後は石けんを使用してよく手を洗うこと。
  • 成人(社会人)の場合はこのような規則はない。ただし、周囲への感染拡大防止への配慮は必要。
  • 直接であれ間接的であれ、乳幼児への感染伝播は危険な場合がある。その様な観点から、学校での注意事項に準じた配慮が必要。

 

(*)学校とは幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学及び高等専門学校のこと。

 

 

まとめ
  • 百日咳とは百日咳菌により引き起こされる呼吸器感染症。以前は乳幼児・小児に多い病気であったが、近年では成人での発症が増加している。
  • 乳幼児・小児では強く頑固で長く続く痙攣性の咳が特徴。年長者や成人では痙攣性の咳は稀。長く続く咳だけのことが多い。
  • 小児、特に乳幼児では命に関わることがあるが、成人では稀。
  • 抗生剤はカタル期までは症状改善に有効。それ以降は症状改善には無効。
  • ただし、百日咳患者からの排菌は約3週間持続する。カタル期以降でも周囲への感染拡大の防止の目的で抗生剤は有用される。したがって、咳がおさまっても抗生剤を5~7日間は服用をする必要がある(クラリスロマイシンの場合)。すなわち、処方された薬は飲み切ることが大切。
  • 成人(社会人)でも園児・学童・生徒・学生と同じ配慮が望まれる。