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ロタウイルス感染性胃腸炎とは
急性感染性胃腸炎は世界における小児の死亡者、罹患者の最も多い原因の一つです。世界で、この疾患により年間180万の小児が亡くなっています。その中で、ロタウイルスは乳幼児の重症急性胃腸炎の主要な原因病原体の一つです。世界で、その感染により5歳未満の小児が年間約50万人死亡しています。そして、その80%以上は発展途上国で起こっています。
先進国の代表として米国のデータによると、ロタウイルス胃腸炎のため5歳未満の乳幼児が、年間で41万人が外来を受診しています。そのうち、救急外来受診者20~27万人、入院5.5~7万人、死亡例20~60人とのことです。
わが国ではロタウイルス感染症による死亡例は年間2~18名の報告があります(平成12~24年、厚生労働省)。ただし、感染者は非常に多く、小児感染症の重要な病原体の一つとなっています。
秋田県、三重県、京都府で行われた胃腸炎の調査研究からの推計では、わが国における感染性胃腸炎患者のうち、約半数がロタウイルスによるものです。年間120万人の発症があり、80万人が医療機関を受診しています。5歳までにロタウイルス胃腸炎で入院するリスクは15人に1人で、7万8千人の小児が入院しています。
感染経路
ロタイルスの主な感染経路は「ヒトからヒト」への糞口感染です。このウイルスは感染力が極めて高く、ウイルス粒子10~100個で感染が成立します。そのため、開発途上国と先進国を問わず、世界中でほぼ全ての小児が5歳までにロタウイルスに感染します。たとえ衛生状態が良好な先進国でも、その感染予防はきわめて困難です。
再感染は頻繁におこしますが、感染の度に免疫を獲得し疾患の重症度は減少します。したがって、重症のロタウイルス感染は年長児や成人ではあまりみられません。
一方で、感染児の両親・保護者、免疫不全者、高齢者では感染を引き起こすことがあります。ロタウイルスに感染している子供と接触した成人のうち30~50%が感染すると言われています。ほとんどの場合、それ以前の感染で免疫ができているため、不顕性感染に終わります。しかし、症状がなくてもウイルスは体内に潜んでいて、便とともに排出されます。その結果、知らず知らずの内にウイルスを子供にうつしてしまうこともあります。したがって、子供がロタウイルス胃腸炎にかかった場合、大人も十分に注意する必要があります。
ロタウイルスの流行時期は例年3月から5月頃で、ノロウイルスの流行が終わった後にロタウイルスがややってきます。
臨床症状
ロタウイルスによる胃腸炎は、ノロウイルスによるものより症状が重く、発熱もしやすいようです。通常2日間の潜伏期間の後、嘔吐、下痢、発熱を主症状とした急性胃腸炎を引き起こします。病初期は嘔吐と発熱があり、その後水様性の下痢が出現します。下痢は米のとぎ汁様の白色から黄色。粘液や血液の混入は見られません。通常1~2週間で自然に治癒します。
合併症
合併症として痙攣、肝機能異常、急性腎不全、脳症・脳炎、心筋炎などがあります。重症化すると死に至ることもあります。意識が不安定になったり、低下したり、けいれん等の症状が現れた際には、すぐに医療機関を受診してください。
ロタウイルス脳炎・脳症の特徴としては、難治性の痙攣で、後遺症を残す場合が38%に上るとされています。これらの患者の年齢は1~2歳児が多く、急性胃腸炎の好発年齢に合致して報告患者が多くなっています。
病原診断
患者さんの症状や家族など周囲の感染状況などを総合的に判断して、ロタウイルスを原因と推定して診療が行われます。しかし症状だけでロタウイルスの確定診断はできません。
最も一般的なロタウイルスの検査方法は、便を用いて診断する迅速診断検査(イムノクロマト法)です。およそ15~20分程度で結果が判明します。この検査には健康保険の適用があります。医師の判断で検査を行うこととなります。ただし、この検査は一部のロタウイルスを検出できないため、感染していても陽性とならない場合もあります。
治療
ロタウイルスに有効な抗ウイルス療法はありません。また、抗生剤は効きません。下痢止めは病気の回復をおくらせることがあるため使用しません。脱水に対しての水分補給や体力消耗を防ぐための栄養補給が治療の中心となります。脱水症状がひどい場合には医療機関で点滴を行うなどの治療が必要になります。特に、乳幼児では脱水になりやすく、注意が必要です。水分を摂ってもすぐに吐いてしまう、尿が出ていないなどの場合は、早めに病院を受診するようにしましょう。
予防
ロタウイルスは非常に感染力が強く増殖力もあるため、予防は難しくなります。感染者の便には下痢の始まる2日程度前からロタウイルスが含まれ、症状が治まった後でもしばらくはウイルスが検出されます。
また、このウイルスはノロウイルスと同様に、ウイルスの構造上エンベロープがなく消毒にはアルコールはあまり効果がありません。したがって、次のようなことに気を付けて、感染・二次感染の予防に努めてください。
ロタウイルスワクチン
これらの取組を行ってもロタウイルスは感染力が非常に強いので、感染を完全に予防することは困難です。日本では、2種類のロタウイルスのワクチン(単価と5価)が承認されていて、任意で接種を受けることができます。対象者はいずれのワクチンも乳児であり、具体的な接種期間は、単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間です。ただし、どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されます。詳細については、小児科でご相談ください。
【ロタウイルス消毒法】