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悪心・嘔吐とは |
悪心・嘔吐の発生機序と原因疾患 |
■発生機序
■中枢性疾患
①大脳皮質からの刺激が嘔吐中枢に作用
脳腫瘍、脳出血、クモ膜下出血、髄膜炎、頭部外傷、慢性硬膜下血腫 など
②化学受容器引き金帯(CTZ)からの刺激が嘔吐中枢に作用
薬剤性:抗がん薬、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、モルヒネ、ジギタリス、メトホルミン、抗菌薬(サルファ剤、エリスロマイシン、テトラサイクリンなど)、降圧薬、アミノフィリン、コルヒチン、抗認知症薬(ドネペジルなど)、アルコールなど
重金属、ガスなど
③直接的に嘔吐中枢に作用
■末梢性疾患
①消化器疾患
各臓器の悪性疾患(がん):食道、胃、小腸、大腸、肝、胆・膵がんなど
舌・咽頭疾患:アデノイド・咽頭炎、咽頭の直接刺激
食道疾患:マロリー・ワイス症候群、胃食道逆流症(GERD)、食道裂孔ヘルニア
胃腸疾患:急性胃炎、急性腸炎、急性虫垂炎、胃十二指腸潰瘍(穿孔)、食中毒、寄生虫、腹膜炎、腸閉塞、胃幽門部狭窄、上腸間膜動脈症候群
肝疾患:急性肝炎、肝硬変、肝不全
胆膵疾患:胆石症、急性胆嚢炎、胆管炎、急性膵炎
②循環器疾患
急性心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全、腹部大動脈瘤解離・破裂
③泌尿器疾患
腎結石、尿管結石
④耳鼻疾患
中耳炎、メニエール病、良性発作性めまい症、乗り物酔いなど
⑤眼疾患
緑内障
⑥婦人科疾患
卵巣軸捻転、子宮外妊娠、子宮付属器炎、月経症候群、更年期障害
⑦その他
妊娠アレルギー、肺炎、喘息などによる激しい咳嗽発作
※赤字:特に見逃すと危険な疾患
診断のポイント |
原因疾患を確定する上で、腹痛、発熱、頭痛、意識障害、胸痛などの随伴症状の有無を考慮することが重要。
■消化器疾患
消化器疾患は悪心・嘔吐の原因として最も頻度が高い。腹痛、下痢、腹部膨満などの腹部症状を伴うことが多い。
最も多い疾患:急性胃腸炎(消化管感染症)
ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど
食事内容、周りに同じ症状の人はいないか、発熱・下痢・腹痛はあるか?
下痢を伴わない悪心・嘔吐を急性胃腸炎とゴミ箱診断しないこと
嘔吐を伴う消化管感染症は小腸型
消化器疾患:急性胃腸炎、腸閉塞、虚血性腸炎、胆嚢炎・胆管炎、急性肝炎、膵炎、虫垂炎など
胃腸炎:悪心・嘔吐→腹痛
虫垂炎:腹痛(上腹部、臍周辺痛)→悪心・嘔吐→右下腹部痛
※)悪心・嘔吐→心窩部痛の場合は虫垂炎は否定的
急性胃腸炎、食中毒
食直後の悪心・嘔吐は急性胃炎、消化性潰瘍
食後数時間経ってからの嘔吐は幽門狭窄
※)悪心が食事と無関係の場合には頭蓋内圧亢進や代謝性疾患
食物残漬を大量に含む場合は幽門狭窄、アカラシア
胆汁を含む場合は十二指腸乳頭部以下の閉塞、胃切除後
コーヒー残渣様の場合は胃癌、消化性潰瘍
糞臭の場合はイレウス、胃結腸瘻
過去の悪心・嘔吐の経験
消化器疾患の手術歴があれば腸閉塞
高血圧、糖尿病、肝疾患、心疾患、腎疾患、内分泌疾患など
アルコール、薬物の服用
有機溶剤、化学薬品
月経(妊娠)、ダイエット歴
■消化器疾患以外
消化器疾患以外でも悪心・嘔吐をきたす
悪心を伴わない噴出するような嘔吐:頭蓋内圧亢進をきたす疾患
心筋梗塞
胸痛を伴わず腹痛、悪心・嘔吐で来院する場合や胸痛、腹痛いづれも伴わず悪心・嘔吐のみの場合もある
心筋炎
倦怠感、悪心・嘔吐で来院する心筋炎などは見逃されやすい
腎盂腎炎、中耳炎、髄膜炎、肺炎
脳圧亢進を伴う疾患(脳腫瘍、脳出血・梗塞、クモ膜下出血、髄膜炎など)、片頭痛
小脳梗塞・出血、良性発作性頭位めまい症
尿管結石
精巣軸捻転、卵巣軸捻転、異所性妊娠(子宮外妊娠)
抗がん薬、NSAIDs、モルヒネ、ジギタリス、抗不整脈薬、降圧薬、メトホルミン、抗菌薬(サルファ剤、エリスロマイシン、テトラサイクリンなど)、アミノフィリン、コルヒチン、抗うつ薬、抗認知症薬(ドネペジルなど)、抗パーキンソン薬、抗痙攣薬、鉄剤など
電解質異常、内分泌異常:低ナトリウム血症、高カルシウム血症、糖尿病昏睡、尿毒症、副腎不全
悪性疾患(がん)、消化性潰瘍(胃十二指腸潰瘍)、逆流性食道炎、機能性胃腸炎、胃不全麻痺
うつ病、摂食障害(拒食症・過食症)、DV(ドメスティク・バイオレンス)