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悪心・嘔吐

 

 

 

悪心・嘔吐とは
  • 悪心とは胃内のものを吐き出したいという切迫した要求のことで、嘔気、吐き気ともいう。
  • 通常嘔吐の前に自覚される主観的な感覚であり、「むかつく」「胸やけ」「気持ちが悪い」「吐きそう」「げっとなる」などと表現される。
  • しばしば顔面蒼白、冷汗、唾液分泌、頻脈、下痢などの自律神経症状を伴う。
  • 嘔吐とは胃の中の内容物が食道・口を逆流し勢いよく体外に吐き出される現象をいう。通常、悪心に続いて起こり、不快感、苦痛を伴う。
  • 嘔吐は「吐いた」「食べ物がでた」「もどした」などと表現される。
  • 悪心のみで嘔吐を伴わない場合や、逆に悪心を伴わずに突然嘔吐することもある。
  • 悪心・嘔吐は緊急処置が必要な急性腹症や脳圧亢進症や心筋梗塞の主要な症状の場合もあり、注意が必要。
  • 逆流とは吐き気を伴わず横隔膜や腹部の筋肉の強い収縮を伴わず胃内容物食道や口腔に流出すること。
  • 反芻とは明らかな身体的原因がないにもかかわらず逆流を繰り返すこと。通常、逆流物は口腔まで到達し再び咀嚼され嚥下される。反芻は通常は不随意のもので、吐き気、痛み、嚥下困難を伴うことなく起こる。反芻は乳児によくみられる。成人では、ほとんどの場合は情緒障害のある人に起こる(特にストレスにさらされている時)。

 

悪心・嘔吐の発生機序と原因疾患

 

■発生機序

  • 嘔吐は嘔吐中枢は延髄の背側毛様体に存在する嘔吐中枢と第四脳室底部の化学受容器引き金帯(CTZ:chemoreceptor trigger zone)により制御され、腸管、咽頭、腹壁腹筋の神経反射により惹起される。
  • 嘔吐中枢は局在のはっきりしたものではなく、一連の嘔吐運動を惹き起こすネットワークと考えられている。嘔吐を惹き起こす刺激はは迷走神経、交感神経、運動神経を介して嘔吐(反射)を惹き起こす。また、上位中枢(大脳)に伝えられ悪心(嘔気)として認識される。
  • 嘔吐中枢の近傍には呼吸中枢、血管運動中枢、消化管運動中枢、唾液分必中枢、前庭神経核などがあるため発汗、唾液分必、顔面蒼白、脈拍減弱、徐脈、頻脈、血圧の動揺、めまいなど種々の症状を伴うことが多い。
  • 嘔吐中枢が刺激されると迷走神経、交感神経、横隔膜神経、脊髄神経などを介して、胃噴門部が弛緩し胃幽門部が閉鎖され胃の逆蠕動が起こる。さらに横隔膜や腹筋が強く収縮することで、胃内容物や胃液が排出される。
  • 悪心・嘔吐の原因は消化器疾患とは限らない。
  • 嘔吐は嘔吐中枢を刺激する原因によって中枢性嘔吐末梢性嘔吐に大別される。

 

 

■中枢性疾患

①大脳皮質からの刺激が嘔吐中枢に作用

  • 脳圧亢進:頭痛、意識障害、痙攣、局所神経障害

脳腫瘍脳出血クモ膜下出血髄膜炎頭部外傷慢性硬膜下血腫 など

  • 脳循環障害:ショック、低酸素血症、脳梗塞脳炎髄膜炎、片頭痛 など
  • 上位中枢神経刺激疾患:拒食症、過食症、ヒステリー、うつ病・うつ状態、不快感・嫌悪感、恐怖・ストレス、周期性嘔吐(小児)など

②化学受容器引き金帯(CTZ)からの刺激が嘔吐中枢に作用

  • 薬物・中毒

薬剤性:抗がん薬、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、モルヒネ、ジギタリス、メトホルミン、抗菌薬(サルファ剤、エリスロマイシン、テトラサイクリンなど)、降圧薬、アミノフィリン、コルヒチン、抗認知症薬(ドネペジルなど)、アルコールなど

重金属、ガスなど

③直接的に嘔吐中枢に作用

  • 内分泌疾患肝性脳症(肝硬変・肝不全)、乳酸アシドーシス糖尿病性昏睡尿毒症、妊娠(つわり)、妊娠中毒症など
  • 代謝異常:甲状腺機能亢進症、副腎不全、Addison病など

 

■末梢性疾患

①消化器疾患

各臓器の悪性疾患(がん):食道、胃、小腸、大腸、肝、胆・膵がんなど

舌・咽頭疾患:アデノイド・咽頭炎、咽頭の直接刺激

食道疾患:マロリー・ワイス症候群、胃食道逆流症(GERD)、食道裂孔ヘルニア

胃腸疾患:急性胃炎、急性腸炎、急性虫垂炎、胃十二指腸潰瘍(穿孔)、食中毒、寄生虫、腹膜炎腸閉塞、胃幽門部狭窄、上腸間膜動脈症候群

肝疾患:急性肝炎、肝硬変、肝不全

胆膵疾患:胆石症、急性胆嚢炎胆管炎急性膵炎

②循環器疾患

急性心筋梗塞狭心症うっ血性心不全腹部大動脈瘤解離・破裂

③泌尿器疾患

腎結石、尿管結石

④耳鼻疾患

中耳炎、メニエール病、良性発作性めまい症、乗り物酔いなど

⑤眼疾患

緑内障

⑥婦人科疾患

卵巣軸捻転子宮外妊娠、子宮付属器炎、月経症候群、更年期障害

⑦その他

妊娠アレルギー、肺炎、喘息などによる激しい咳嗽発作

 

※赤字:特に見逃すと危険な疾患

 

 

 

診断のポイント

 

 原因疾患を確定する上で、腹痛、発熱、頭痛、意識障害、胸痛などの随伴症状の有無を考慮することが重要。

 

■消化器疾患

消化器疾患は悪心・嘔吐の原因として最も頻度が高い。腹痛、下痢、腹部膨満などの腹部症状を伴うことが多い。

  • 悪心・嘔吐+下痢

最も多い疾患:急性胃腸炎(消化管感染症)

ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど

食事内容、周りに同じ症状の人はいないか、発熱・下痢・腹痛はあるか?

下痢を伴わない悪心・嘔吐を急性胃腸炎とゴミ箱診断しないこと

嘔吐を伴う消化管感染症は小腸型

  • 悪心・嘔吐+腹痛

消化器疾患:急性胃腸炎、腸閉塞虚血性腸炎胆嚢炎・胆管炎急性肝炎膵炎虫垂炎など

  • 虫垂炎との鑑別には悪心・嘔吐と腹痛の出現順位が重要

胃腸炎:悪心・嘔吐→腹痛

虫垂炎:腹痛(上腹部、臍周辺痛)→悪心・嘔吐→右下腹部痛

※)悪心・嘔吐→心窩部痛の場合は虫垂炎は否定的

  • 悪心・嘔吐+発熱

急性胃腸炎、食中毒

  • 食物摂取から症状発現までの時間的関係

食直後の悪心・嘔吐は急性胃炎、消化性潰瘍

食後数時間経ってからの嘔吐は幽門狭窄

※)悪心が食事と無関係の場合には頭蓋内圧亢進や代謝性疾患

  • 嘔吐の回数、量、内容(成分、色調)

食物残漬を大量に含む場合は幽門狭窄、アカラシア

胆汁を含む場合は十二指腸乳頭部以下の閉塞、胃切除後

コーヒー残渣様の場合は胃癌、消化性潰瘍

糞臭の場合はイレウス、胃結腸瘻

  • 既往歴(とくに手術歴、入院歴)

過去の悪心・嘔吐の経験

消化器疾患の手術歴があれば腸閉塞

高血圧、糖尿病、肝疾患、心疾患、腎疾患、内分泌疾患など

  • 嗜好品、いつも服用してる薬

アルコール、薬物の服用

  • 職業

有機溶剤、化学薬品

  • その他

月経(妊娠)、ダイエット歴

 

 

■消化器疾患以外

消化器疾患以外でも悪心・嘔吐をきたす

  • 悪心を伴わない嘔吐

悪心を伴わない噴出するような嘔吐:頭蓋内圧亢進をきたす疾患

  • 胸痛+悪心・嘔吐

心筋梗塞

胸痛を伴わず腹痛、悪心・嘔吐で来院する場合や胸痛、腹痛いづれも伴わず悪心・嘔吐のみの場合もある

心筋炎

倦怠感、悪心・嘔吐で来院する心筋炎などは見逃されやすい

  • 発熱+悪心・嘔吐

腎盂腎炎、中耳炎、髄膜炎、肺炎

  • 頭痛+悪心・嘔吐

脳圧亢進を伴う疾患(脳腫瘍、脳出血・梗塞、クモ膜下出血、髄膜炎など)、片頭痛

  • めまい+悪心・嘔吐

小脳梗塞・出血、良性発作性頭位めまい症

  • 腹痛・腰痛+悪心・嘔吐

尿管結石

  • 下腹部痛+悪心・嘔吐

精巣軸捻転、卵巣軸捻転、異所性妊娠(子宮外妊娠)

  • 妊娠の可能性は?(女性を見たら妊娠を疑う)
  • 薬剤性も頻度が高い

抗がん薬、NSAIDs、モルヒネ、ジギタリス、抗不整脈薬、降圧薬、メトホルミン、抗菌薬(サルファ剤、エリスロマイシン、テトラサイクリンなど)、アミノフィリン、コルヒチン、抗うつ薬、抗認知症薬(ドネペジルなど)、抗パーキンソン薬、抗痙攣薬、鉄剤など

  • 見逃されやすい疾患

電解質異常、内分泌異常:低ナトリウム血症、高カルシウム血症、糖尿病昏睡、尿毒症、副腎不全

  • 1カ月以上続く悪心・嘔吐

悪性疾患(がん)、消化性潰瘍(胃十二指腸潰瘍)、逆流性食道炎、機能性胃腸炎、胃不全麻痺

うつ病、摂食障害(拒食症・過食症)、DV(ドメスティク・バイオレンス)