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2014年8月
老け顔の人は見た目が若い人より早死する
こんなショッキングな研究が2009年に南デンマーク大学で老化医学を専門としているユーア・クリステンセン教授のグループから発表されました(BMJ 英国医学誌)。
研究は70歳以上のデンマーク人1,826人の双子を対象に行われました。内訳は2001年の時点で生存していた387組の双子と片方が死亡したか研究に参加しなかった1,052人の双子の片方です。
2001年に全員が身体的検査と認知力検査を受け、写真を撮りました。その写真を41人の男女(看護師20人、若い男性の教育実習生10人、老年女性11人)に見せて、写真の人物が何歳に見えるか推定してもらいました。彼らは研究参加者の実際の年齢や年齢層は知りません。また、双子については先入観を避けるため、日を変えて見せています。
この研究で双子を取り上げた理由については以下の通りです。老化に関する同じ遺伝子情報を持っているため、環境の違いにより生じた見た目の変化が寿命の違いに影響するかどうかを容易に見極めることができるからです。
その7年後の2008年の時点での双子の生存状況を調べました。その結果、7年間に全体の37%に当たる675人が亡くなっていました。その多くは2001年の時点で「老けて見られた人たち」の方でした。なんと、死亡率は若く見られた人たちの1.9倍にもなっていました。
さらに、見た目の年齢の違いが大きいほど、老けて見えた双子の片方が早く死亡していました。また、若く見られた人たちがより長生きする傾向がありました。
同教授は「苦労の多い生活を送った人々が、より早く死ぬ傾向があるのかもしれない。彼らの人生が顔に反映して老けて見えたのかもしれない」とコメントしています。
また、グループは染色体の末端に見られる「テロメア」の長さを調べています。テロメアは染色体末端部を保護する働きがあり老化と寿命と深い関係があります。細胞分裂の時の回数券のようなもので、細胞が分裂を繰り返す毎に切符が切られテロメアは短くなっていきます。一定の長さ以下になると細胞は分裂を停止し死に至ります。故に、テロメアは「生命の回数券」とも呼ばれています。
今回の研究でも、老けて見える人のテロメアは短く、若く見える人ほど長い傾向があったそうです。なお、年齢、性別、職業などはこの結果に影響を与えなかったとのことでした(ニューヨーク・デーリーニュース)。
もし、あなたが「若く見えますね」と褒められたら、「長生きできる可能性が高い」ということになります。素直に喜んでよいのかもしれません。
なぜ老け顔の人は早死にするのか?
久留米大学医学部の山岸昌一教授によれば「見た目が老けている人は、体内の老化も進んでいて病気になりやすい」。老けて見えるのは「しわ、たるみ、しみ、くすみ」が原因で、「糖化により産生されたAGEs(終末糖化産物)と呼ばれる悪玉物質が関係しているのでは」とのことです。
糖化とAGEs(終末糖化産物)
ここにホットケーキがあります。材料は小麦粉に砂糖、卵、牛乳などです。これを混ぜて焼けば、こんがりとキツネ色になります。このおいしそうな「こげ色」。実は、糖化によって起こる変化なのです。
1912年フランスの化学者メイラードはタンパク質(アミノ酸)と糖を一緒に加熱すると褐色に変化することを発見しました。この反応を糖化といいます。また、発見者の名をとってメイラード反応とも呼ばれています。褐色の物質を生み出す反応であり褐変反応と呼ばれることもあります。
糖化は熱がなくても生じます。しかし、その進行は非常にゆっくりしています。ここに熱(加熱)が加わると、この反応は一気に進行します。
糖化がさらに持続するとタンパク質の変性・劣化が繰り返しされ、複雑な過程を経て最終的にAGEs(終末糖化産物)が産生されてきます。AGEsは糖がくっ付いて変性・劣化したタンパク質です。
老化の原因…酸化「さび」と糖化「おこげ」
歳をとると老化するのは当たり前。しかし、なぜ老化という現象が起こるのかはよく分かっていません。老化のメカニズムが分かり、それを阻止できれば、いわゆる「不老不死」という人類の夢の入り口に立つことができるかも知れません。
以前は老化の最大の原因は酸化、すなわち「さび」だと考えられていました。しかし、最近になって糖尿病の研究からもう一つ原因がクローズアップされてきました。それが糖化、すなわち「おこげ」です。糖化によりできたAGEs(終末糖化産物)は「おこげ」に相当します。これこそ老化の真犯人ではないかと考えられるようになってきました。
AGEとはage(年齢)のことではありません。AGEsはAdvanced Glycation End Productsの頭文字からきています。Advancedは「進行性」、Glycationは「糖化」、End Productsは「最終産物」、sは「複数」を意味します。なお、Advanced「進行性」ですので、一度できたAGEsは元に戻ることはできません。
体の中での糖化からAGEsへの過程
人の皮膚、骨、臓器は様々なタンパク質でできています。ぶどう糖は主なエネルギーとして全身をめぐっています。また、私たち人間の体は高温ではありませんが、36~37℃位の一定の体温(温度)に保たれています。すなわち、私たちの体には糖化からAGEsができる条件が整っている訳です。
体の「タンパク質と糖」がゆっくり料理されるかのようにジワジワと「加熱」され「糖化」されていきます。ゆっくりとホットケーキのように焼き上げられ組織や細胞に焦げ目が付いていきます。そうです、体の一部に「AGEs」すなわち「おこげ」ができてしまうのです。
糖化を受けるタンパク質はたくさんの種類があります。また、糖も複数あります。そして、AGEsへの過程は色々な経路があり、その経路自体も大変複雑です。したがって、出来上がったAGEsは少なくとも数十種以上はあると考えられています。ここでは、ごく簡単にイメージとして説明してみましょう。
まず、体の細胞や組織のタンパク質がネチャネチャ・ベトベトの砂糖漬けになった状態をイメージしてみてください。そして、体温で加熱されます。ゆっくりではありますが糖化反応は進んでいきます。
最初のうちは糖の濃度が下がれば糖はタンパク質から離れて正常のタンパク質に戻ることができます。しかし、タンパク質が高濃度の糖に長時間さらされると糖化反応はさらに進行します。その結果、本来のタンパク質とは全く異なるタンパク質となり最後にはAGEs(終末糖化産物)となってしまいます。ここまでくると、もう元のタンパク質には戻ることができません。そして、強い毒性を持ち、老化や生活習慣病やがんの原因の一つとなる訳です。
糖尿病とAGEs
糖尿病では血液中のぶどう糖の濃度が高い状態(高血糖)が続いています。すなわち、過剰の糖(ブドウ糖)が体のタンパク質と結合して体温でジワジワと加熱され大量のAGEsが作られる状況下にあります。糖尿病の3大合併症と呼ばれる神経障害、網膜症、腎症や、糖尿病の手前(予備群)からでも発症する動脈硬化の原因物質になります。
3大合併症以外にも、骨粗鬆症、白内障、アルツハイマー病などは糖尿病の代表的な合併症です。また、がんは糖尿病をもっていない人と比べると約1.2倍高い確率で発症します。これらに関しても糖尿病とAGEsの関係が注目されてきています。
糖尿病の診断や治療経過を診るために用いられるHbA1c(ヘモグロビンA1c)。実は、赤血球のタンパク質であるヘモグロビンが糖化してAGEsに変化する一歩手前の中間糖化物質だったのです。HbA1cが高値を示す時は過剰なブドウ糖がある時、すなわち高血糖状態が続いていることを意味します。そして、HbA1cが高い人は体内のAGEsも高い傾向があります。
AGEsと病気
肌のハリややわらかさを保っているのはコラーゲンなどのタンパク質です。肌のコラーゲンは加齢により長い歳月をかけてじわじわと体温で加熱されていきます。コラーゲンのAGE化(糖化)です。太陽の紫外線も影響も加わります。コラーゲンは変質し弾力性を失いシワやたるみが出てきます。また、AGEsは褐色のためシミやくすみも発生してしまいます。
血管の内側の内皮細胞と外側の平滑筋細胞の間にもコラーゲンは存在します。ゴムのような弾力とクッションのような役割を果たしています。このコラーゲンがAGE化(糖化)すると血管の弾力が失われ厚く硬くなり、全身の血管の動脈硬化を起こします。また、血栓をつくりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞など深刻な病気をおこします。
骨を鉄筋コンクリートの建物に例えると、コラーゲンは鉄筋、骨塩はセメントに相当します。どちらの質や強度が低下しても、その建物の強度は低下します。地震などにより容易に崩壊してしまいます。骨も同じです。鉄筋にあたるコラーゲンのAGE化(糖化)により骨の弾力性や強度が低下し、ちょっとした外力で骨折してしまうことになります。これを骨粗鬆症といいます。
水晶体は黒目の奥でカメラのレンズの様な役割をしていています。それはクリスタリンというタンパク質でできています。クリスタリンのAGE化(糖化)と紫外線による酸化とあいまって水晶体が白く濁り白内障を起こします。水晶体のクリスタリンは一生涯入れ替わりません。それだけに、時間の経過とともにAGEsが蓄積していきます。
がんは日本人の死亡原因の第1位です。細胞内に蓄積されたAGEsは細胞の設計図であるDNAを障害し、その複製や修復に悪影響を与えがん細胞の発生を誘導します。さらに、その増殖や転移にも深く関わっています。
脳内のタンパク質が糖化すると、その中にβアミロイドというタンパク質に変質するものが出てきます。立体構造に変質したβアミロイドは組織に沈着しやすく老人班と呼ばれる班点をつくります。この班点が広がると神経細胞を死滅させアルツハイマー型の認知症を引き起こします。
参考文献