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糖尿病は血管の病気
糖尿病は血管の病気ともいわれています。糖尿病による慢性の高血糖は全身の様々な血管を障害し機能障害をもたらします。この血管障害は、①細い血管の障害である細小血管症と、②より太い血管の障害である大血管症に分けられます。
ここでは②大血管症である動脈硬化について説明します。
糖尿病と動脈硬化
糖尿病が悪化し動脈硬化が進展すると全身の動脈に影響を与える可能性があります。大血管症は動脈硬化に起因する合併症で、脳への血管が障害を受けると脳梗塞(脳卒中)、心臓に血液を送る血管に障害を受けると狭心症や心筋梗塞(冠動脈疾患)、下肢への血行が障害されると歩行障害や下肢閉塞性動脈硬化症となり、ひどい場合は下肢の切断につながります。
糖尿病合併症のうち、生命により大きな影響を及ぼすのは腎症などの細小血管症(障害)ではなく、心筋梗塞や脳卒中などの大血管症(障害)です。
これらは糖尿病に特有な合併症ではありません。もちろん、糖尿病自体は危険因子です。それに他の危険因子(高血圧、高脂血症、肥満、喫煙など)が複雑に絡み合って発症します。
糖尿病患者の死因
全国282施設でアンケート方式により1991年より10年間18,385名の糖尿病患者の死因を分析したデータがあります。
がん(悪性疾患)34%、虚血性心疾患10%、脳血管疾患10%、糖尿病腎症7%、肺炎などの感染症14%、その他の疾患24%でした。
心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳血管疾患や糖尿病腎症による血管障害による死亡が27%を占めています(図1)。
糖尿病患者は10年早死にする
糖尿病患者の平均寿命も調査されています。糖尿病患者は一般の日本人と比べて、男性で9.6年、女性で13.0年平均寿命が短いことも分かりました(図2)。
糖尿病患者はがんや血管疾患で早死にする
糖尿病患者はどのような病気で早死にしているのでしょうか?
糖尿病患者と一般の人の死亡原因を比較しています。糖尿病の細小血管症の最終的な合併症である腎症で死亡するのは、わずか7%です。
この糖尿病腎症を除くと一般の人と余り違いはありません。すなわち、糖尿病患者の死亡原因は一般の人と変わりません。血管疾患を10年早く発症し、しかも最終的合併症の腎症の3倍多く死亡しています(図2、3)。
糖尿病患者は脳梗塞や心筋梗塞を
発症しやすい
久山町研究は我が国が世界に誇る疫学研究です。それによると、糖尿病患者は脳梗塞(*)や心筋梗塞の発症率が、糖尿病のない人と比べると3倍以上でした。他の疫学研究でも同じようなことが確かめられています(図4)。
*:糖尿病と脳卒中の発症リスク: 脳出血とはあまり関係がなく、脳梗塞のリスクが高くなる |
また、ある病院のデータによると、脳梗塞になった人の半数、心筋梗塞になった人の1/3に糖尿病が認められていたとのことです。
脳梗塞や心筋梗塞は
予備群の頃から発症する
さらに驚くべきことに、脳梗塞や心筋梗塞は糖尿病になってから発症するのではありません。糖尿病の前段階である予備群からでも約2倍多く発症しています(図5)。
怖いのはどちら?
細い血管の障害(細小血管症)である腎症は、糖尿病になりコントロールが悪い状況が続く(約15年)と出現する最終的な合併症です。
それに対して、太い血管の障害(大血管症)は糖尿病の前段階である予備群から出現します。しかも、命に係わることが多い(死亡率3倍)合併症です。幸い命に係わらない場合でも麻痺、寝たきり、認知症、心不全などの後遺症を残すことが多々あります。また、なんの前触れもなくある日突然やってきます(図6)。
あなたはどちらが怖いですか?