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本当に危ない人工甘味料(その4)

 

 

 

 

ネオテーム

 

 ネオテーム(neotame)は高甘味度の人工甘味料の1つです。スクロース(ショ糖、砂糖)の1万倍(7,000~13,000倍)、類似の構造を持つアスパルテームの30~60倍の甘味度です。2014年に認可されたショ糖の2万倍の甘味を持つアドバンテームが出るまでは人工甘味料のうち最強度の甘味を持っていました。ネオテーム(neotame)のネオ(neo)は「新しい」、テーム(tame)はアスパルテーム(aspartame)、すなわちアスパルテームの改良型ということです。

 

 ネオテームは1988年米国のモンサント社によって開発されました。その後、特許は同社傘下の甘味料製造会社のニュートラスイート社に譲渡され、2002年から米国のファイザー社が保有しています。米国では2002年に甘味料及び風味増強剤として一般食品分野への使用がFDA(食品医薬品局)によって許可されました。日本では2007年12月、大日本住友製薬とニュートラスイート(当時)からの申請で食品添加物として認可されミラスイーという商品名で販売されています。

 

 

■ネオテームはアスパルテームの改良型

 ネオテームの有機化合物命名法(IUPAC命名法)ではN-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルです。アスパルテームを還元的N-アルキル化することによって合成されアルデヒドを加えた物質です。分かりやすく言うとアスパルテームをベースにして3,3-ジメチルブチルアルデヒド物質です。3,3-ジメチルブチルアルデヒドは米環境保護庁の化学物質リストによると最も有害な化学物質で引火性が高く、皮膚や目、呼吸器官に刺激をもたらす物質として危険表示されています。

 

 なぜ、このような毒性物質を使用するのでしょうか。アスパルテームに3,3-ジメチルブチルアルデヒドを反応させることでアスパルテームの30~60倍の甘みを持つ、化学的にも熱や各酵素にも安定化したネオテームができます。その特性を生かしてケーキやプリンなどに好んで使用されます。

 

 さらに、ネオテームはアスパルテームと異なりL-フェニルアラニン含有の表示義務はありません。アスパルテームでは摂取後体内でL-アスパラギン酸とL-ファニルアラニンとメタノールに代謝されます。L-フェニルアラニンをチロシンに代謝する酵素が先天的に障害されているフェニルケトン尿症の患者さんでは、L-フェニルアラニンの血中濃度が高くなりチロシンの血中濃度が低くなり精神発達などの障害を生じます。そのため、アスパルテーム製品にはL-フェニルアラニンを含有する旨を表記する義務がありました。しかし、ネオテームは原則としてL-フェニルアラニンに代謝されないためL-フェニルアラニン含有の表示義務はありません(図2)。

 

 

 

■ネオテームの危険性

 ネオテームはアスパルテームとは異なりアミノ酸のL-アスパラギン酸とL-フェニルアラニンに代謝されません。したがってアスパルテームで問題となったアスパラギン酸の神経興奮性過剰による神経毒の問題もなさそうです。ただし、メタノールは産生されるため、それによる毒性に関してはアスパルテームと同じです。メタノールは体内でホルマリンから蟻酸に代謝されます。大量の場合は失明、死に至ります。詳しくは、院長の独り言 2020年6月号 第67号をご覧ください。

 

 製造・販売メーカーはin vitroの試験やマウス・犬などを用いた試験やヒトの臨床試験などから、遺伝毒性や発がん性、催奇形性、繁殖・発育障害などの危険性は認められなかったとしています。はたして本当でしょうか? ネオテームが食品添加物として認可される根拠となった食品安全専門委員会の報告を検討してみましょう。

 

■食品安全委員会 添加物専門調査会(2006年)の添加物評価書より抜粋と要約

  • 雌雄ラット(以下、ラット)と雌雄ビーグル犬(以下、犬)に放射性炭素14Cで標識したネオテーム14C標識ネオテーム)を用い体内動態を検討した。
  • ラット、犬ともに単回強制経口投与(低用量:15㎎/kg体重、高容量120㎎/㎏体重)と静脈内投与(15㎎/kg体重)後、血中、組織内、尿中、便中、胎盤・胎児での濃度の測定をした。
  • ラットにおいてネオテームは経口・静脈内投与後速やかにNC-00751(N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン)に変換され、未変化体は検出限界をわずかに上回る程度のみ検出された。これはラット体内では脱エステル化(加水分解)されやすいためと考えられる。
  • 犬においてネオテームは経口・静脈内投与後速やかにNC-00751に変換された。
  • 犬において吸収率を尿中の14C排出量から見積もると、経口摂取後の吸収率は低用量では32~34%、高容量で約47%であった。生物学的利用率は低用量で約8%、高容量で19~32%と推定された。
  • 有色雄ラットでの組織内濃度は消化管を除くと肝臓、腎臓、膀胱では血中濃度より高濃度で他の組織では血中より低濃度であった。
  • 妊娠15日の雌ラットに14C標識ネオテームを15mg/kg体重を単回経口投与したところ胎盤において血中や他の抹消組織と同程度の濃度が検出されたが胎児への14Cの移行は認められなかった
  • 経口投与後48時間以内にラットでは90%以上、犬では80%以上が尿中及び便中に排泄された。
  • ラット、マウス、犬において高容量のネオテームを与えたところ最終体重、体重増加量および餌の摂取量減少が認められた。それらは高濃度のネオテーム添加による嗜好性の低下によると考えられた。
  • 餌の摂取量減少により肝、腎、副腎、心、脾、胸腺、前立腺などの臓器重量の減少、脳および精巣の重量増加が認められた。
  • 人における臨床データでは脱エステル化(加水分解)が主経路で実験動物と同様の代謝物が認められた。なお、少量の未同定の代謝物が血漿、尿及び便中に検出された
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■食品安全委員会 添加物専門調査会の評価書の疑問点・問題点

 私見ではありますが、この報告(評価書)に対する疑問点・問題点を述べてみたいと思います。

  • 放射性炭素14C標識ネオテームを用いて体内動態を調べている。しかし、ネオテームおよび代謝物の同定方法に関する記述がない。当時(2006年)のクロマトログラフイなどによる同定法は、最新の方法に比べると検出感度・精度が低く、ネオテームや各代謝物を正確に検出していない可能性が高いと考えられる。例えば、「妊娠15日の雌ラットの胎盤にて他の末梢組織や血管内における濃度と同程度の低濃度の放射能が検出されたが、胎児への放射能の移行は認められなかった」とある。しかし、胎盤に存在する物質が「胎児に移行しない」という現象は明らかに非科学的である。別の検査方法、例えば「院長の独り言2020年7月で取り上げた検出装置(超高性能液体クロマトグラフィータンデム質量分析)」などを使用して同定を行うと検出されるかもしれない。
  • アスパルテームの代謝物のL-アスパラギン酸は神経興奮作用が問題となっている。この報告では脳内のネオテームやその代謝産物に関しての言及がない。アスパルテームと類似の構造をもつ(図2)でも当然疑惑が生じる。ネオテームの体内動態からみても脳内へのネオテームや代謝物の移行はあったと考える方が自然であろう。意図的な隠蔽があったと疑われて仕方ないであろう
  • 妊娠15週の雌ラットに投与されたネオテームは15mg/kg体重のみである。何故か高容量の120mg/kg体重での記述がない。①意図的に高容量での実験を行わなかったのか、あるいは②不都合な結果が出たため公表しなかったのか。このような疑念を抱くのは私だけであろうか。
  • 授乳中の女性において血中や母乳中、および乳児でのネオテームとその代謝物の測定がなされていない。人においても尿中への移行が確認されている。乳児の尿検査は安全に行われるため、回避する理由はないと考えられる。その必要性に考えが及ばなかったのであろうか? それとも授乳中の女性にネオテームを投与することは倫理的な問題があったのであろうか? それとも母乳、乳児への移行が認められたためデータを隠蔽したのであろうか?
  • 人における臨床データで血液・尿中・便中に検出された少量の未同定の代謝物とは何であったのだろうか?発がん性を含め有害な物質の可能性は否定できない。近年の検出装置をもってすれば可能ではなかろうか? 再調査すべきであろう。
  • この報告書全般では次のことが言えるであろう。①非科学的でレベルが低い、②メーカーと委員会の癒着はなかったのか?
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■なぜ砂糖(ショ糖)の1万倍の甘みの人工甘味料を作る必要があるのか?

  • 砂糖の1万倍の甘さとは

ここに角砂糖が1個あります。1辺21.544倍の角砂糖で正立方体を作ると約1万個となります。その甘さ全体を角砂糖1個分に濃縮すると1万倍の甘みを持った物質が出来上がります。右図を見てください。1万個分の角砂糖に比べ1個の角砂糖の何と小さいことか。「恐るべき甘味」です(図3)。

  • ミラスィー200の成分表

ミラスィーはDSP五協フード&ケミカル社からミラスィー200とミラスィーNKという商品名で発売されています。そのうち甘味成分がネオテーム100%のミラスィー200の成分表をみてみましょう。ネオテーム2%、食品素材98%となっています。食品素材の成分は同社のホームページには(私が調べた限り)記載がなく、正体は分かりません。砂糖の200倍の甘味度を有するとのことです。こうなると甘味料というより「恐るべき化学薬品」といった方がよいでしょう。

  • 医薬品の有効成分量

降圧剤アムロジン(アムロジピン)5㎎は直径8.1㎜、厚さ3.5㎜、重さ207㎎の錠剤です。そのうち薬効を持つアムロジピンは5㎎です。有効成分と薬剤全体の重量比は5/207=0.241(2.4%)です。ネオテームは砂糖の1万倍の甘味ですので重量比に換算すると1/10,000=0.0001(0.01%)です。すなわちアムロジピンの200分1以下の含有率です。医薬品より強力な薬効をもつ「恐るべき薬」ともいえるでしょう(図4)。

  • なぜネオテームが存在するのか?

「カロリーゼロで砂糖に近い甘味」と謳えば消費者は飛びつきます。飲食物にネオテームと成分表示をしても正体を知っている消費者は少ないでしょう。特許で守られて安価に製造でき、しかも高値で販売できます。ちなみにミラスィー200の販売価格(税込)は13,600円/1kg、対するグラニュー糖は300~500円/kgです。甘味が砂糖の200倍ですので適正価格なのでしょう。こんな「おいしい話」にメーカーが飛びつかない訳がありせん。