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急性腹症

 

 

 

急性腹症とは

 

  • 急性腹症acute abdomen)とはは急激に発症した腹痛のなかで緊急手術を含む迅速な対応を要する腹部疾患群をいいます。
  • 急性発症の腹痛は消化器、泌尿器、婦人科、血管、筋肉、腹膜など腹腔内のあらゆる臓器・器官の異常により生じるが、時に心筋梗塞など腹部以外の臓器・器官の異常により生じることもあります。
  • 急性腹症はあくまでも暫定的な診断名です。原因疾患の評価を行い、その原因に応じ緊急手術やフォローアップが必要となります。

 

 

診断のポイント

 

■OPQRSTAA

  • 急性腹症の原因は多種多様なため、正確かつ迅速に診断をするためには漏れなく情報を集める必要があります。
  • そのための有力な方法が次の「OPQRSTAA」で、医師・医療スタッフはしばしばこのOPQRSTAAで情報を収集します。
  • 医師や医療スタッフのみならず患者さんもこれを知っておくと、腹痛以外にも頭痛、胸痛、発熱など様々な状態の時に系統的に医療者に情報を伝えることができ大変有用です。
  • OPQRSTAA:O(onset)、P(position)、Q(quality)、R(region/radiation)、S(severity)、T(time course)、A(aggravation factor/Aalleviating factor)、A(associated symptom)

 

■O(onset)、痛みの発症様式

 sudden onset、acute onset、gradually onsetに分けて考えます。

 

①突然発症(sudden onset): 一瞬で痛みが完成します。

それまで何でもなかったが、ある瞬間から一気に痛みのピークが訪れます。

患者さんはその時「何をしていたか」「あの時から痛みが始まった」と痛み始めた瞬間を覚えています。

突然発症では「詰まる」「破ける」「捻じれる」を考えます。

 

詰まる:心筋梗塞、急性腸間膜動脈閉塞、尿管結石 など

破ける:消化管穿孔、大動脈瘤破裂、食道破裂 など

捻じれる:腸捻転、卵巣嚢腫軸捻転、精巣軸捻転 など

 

②急性発症(acute onset):数分~十数分で痛みが完成します。

「何か変だな」と感じ始めてから痛みのピークに達するまで数分~十数分を要します。

代表的疾患:急性膵炎、急性胆嚢炎、胆管炎、腸閉塞

 

③緩徐発症(gradually onset):数十分~数時間で痛みが完成します。

代表的疾患:急性虫垂炎、結腸憩室炎

 

■P(position)、痛みの部位、部位の移動

①右上腹部

胆嚢炎、胆管炎、膵炎、肺炎、十二指腸潰瘍、肝炎

②心窩部

胃・十二指腸潰瘍、胃炎、胃アニサキス症、食道炎、急性膵炎、心筋梗塞、大動脈解離・破裂、虫垂炎(初期)

③左上腹部

脾梗塞、脾破裂、胃潰瘍、急性膵炎、肺炎

④臍周辺

急性虫垂炎(初期)、胃・十二指腸潰瘍、膵炎、腸閉塞、大動脈瘤破裂、大腸脈解離

⑤右下腹部

虫垂炎、鼠径へルニア、卵管炎、卵管軸捻転、子宮外妊娠、尿路結石、大腸炎、大腸憩室炎、腎盂腎炎、腎梗塞、大腸憩室炎、腹部大動脈瘤破裂、大動脈解離

⑥左下腹部

尿路結石、腎盂腎炎、腎梗塞、大腸憩室炎、虚血性腸炎、卵管炎、卵管軸捻転、子宮外妊娠

⑦下腹部

婦人科疾患、虚血性腸炎、膀胱炎、前立腺炎、

⑧腹部全体

汎発性腹膜炎、消化管穿孔、腸閉塞、糖尿病性ケトアシドーシス、急性ポルフィリン症

 

痛みが移動する場合 

大動脈瘤破裂・大動脈解離:胸部→背部(胸部大動脈)、上部→下部(腹部大動脈)

虫垂炎:心窩部・臍周辺→右下腹部に移動

ただし、胃幽門部穿孔、十二指腸潰瘍穿孔、急性膵炎で起こりうる

上行結腸の憩室炎では最初から右上腹部~右下腹部痛で移動しない(疼痛部位が拡大することはある)

胆嚢炎:心窩部→右季肋部に移動

尿管結石:上部→下部に移動

急性腸炎:あちこちに移動し一定しない

 

■Q(quality)、痛みの性質

広範な灼熱感:胃潰瘍穿孔

引き裂かれるような激しい痛み:動脈瘤解離・破裂

 

■R(radiation)、痛みの放散

肩への放散:まず第一に心筋梗塞を考える

肩甲骨の内側:大動脈解離

右肩甲骨下部:胆石発作

左腰部:急性膵炎、左尿管結石

 

■S(severity)、痛みの強さ

0点を全く痛まないとし、10点を最大の痛みとすると、何点の痛み?

客観的評価ができ経過観察にも有用

危険な痛み

今まで経験したことのない人生最大の痛み

次第に増悪する痛み

 

■T(time)、痛みの時間

持続性疼痛か間欠的(波のある)疼痛か?

食後に増悪:胃潰瘍、胆石発作・胆嚢炎、膵炎

空腹時に増悪:十二指腸潰瘍(食後に軽快する)

生魚摂取後:アニサキス症

 

■A(aggravation factor/Alleviating factor)痛みの増悪/緩解

前屈位で軽快:膵炎、汎発性腹膜炎

体動、深呼吸で増悪:胆嚢炎、汎発性腹膜炎、整形外科的問題

排便で軽快:便秘症、大腸炎

飲酒後に増悪:膵炎

 

■A(associated symptom)関連症状

①悪心・嘔吐

悪心・嘔吐は消化器以外の疾患でも多くに認められる。

尿管結石、心筋梗塞(特に下壁梗塞)、大動脈瘤破裂、卵巣茎捻転、子宮外妊娠、糖尿病ケトアシドーシス、副腎不全

腹痛に悪心・嘔吐、下痢を伴う場合は、急性胃腸炎の可能性が高い。

ただし、その順番が大切

悪心・嘔吐→腹痛→下痢:急性腸炎

腹痛→悪心・嘔吐 : 虫垂炎、腸閉塞、胆石・胆嚢炎、尿管結石

腸閉塞

閉塞の部位が腸管の上位であるほど嘔吐は早く始まり吐物の量も多くなる。

胃内容物→緑色の胆汁→緑がかった茶色→茶色(糞便様)に変化する

急性膵炎

②発熱

虫垂炎、胆嚢炎、胆管炎、憩室炎、腹膜炎、急性膵炎(膵壊死)、腎盂腎炎

③神経学的異常所見

 

④糖尿病(口渇・多飲・多尿、体重減少など)の合併

糖尿病ケトアシドーシス

 

⑤月経

妊娠可能年齢の女性は月経状態、最終月経、不正出血を確認する

 

 

 

 

原因疾患

 

■右上腹部

①胆嚢炎

急性発症。心窩部~右上腹部の持続痛。右肩甲骨・肩甲骨間に放散することがある。発熱あり。体動で痛みが増強するため動かない(じっとしている)傾向あり。

②胆管炎

急性発症。心窩部~右上腹部の持続痛。発熱、黄疸を伴う。敗血症、ショックに陥ることあり。

③肺炎

 

■心窩部

①胃・十二指腸潰瘍

食事と関連する心窩部痛。黒色便やタール便。NSAIDsと関連。

②胃炎

 

③胃アニサキス症

 

④食道炎

 

⑤急性膵炎

急性発症。アルコール多飲、胆石の既往。悪心・嘔吐、腰背部痛。

⑥心筋梗塞

 

⑦大動脈破裂

 

⑧動脈解離

 

⑨虫垂炎(初期)

緩徐発症。初期は右下腹部痛ではなく、心窩部・臍周辺の漠然とした痛みから始まる。悪心・嘔吐を伴うこともある。ただし、悪心・嘔吐は腹痛が出現後に現れる。その後、痛みは右下腹部へ移動し持続痛となる。

 

■左上腹部

 

■臍周辺

 

■右下腹部

 

 

■左下腹部