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ノロウイルス腸炎

 

   

 

ノロウイルス腸炎とは

 

 ノロウイルス乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層嘔吐・下痢など急性胃腸炎を引き起こすウイルスです。人の腸管のみで増殖しますが、乾燥に強く水中でも長期間生存が可能です。 感染力が非常に強く、少量のウイルス(10〜100個)でも感染・発症します。そのため、しばしば集団感染を引き起こします。


  カキ
などの貝類などの「食品からの感染」のみでなく、感染したヒトの糞便や吐物、あるいはそれらが乾燥したものから出る塵埃を介しての経口感染、すなわち「ヒトからヒトへの感染」にも注意が必要です。飲食店・給食施設・宿泊施設・保育施設・高齢者施設・病院や多くの人が集まる集客施設などでは、感染予防に向けた万全な衛生管理が求めらています。


  このウイルスは熱には弱いのですが、低温には強く、37℃で1週間、室温で2週間、4℃で2か月、-20℃では数年間感染力を保っています。したがって、冬季に多発します。10月頃から流行が始まり12〜1月にピークを迎えますが、1年を通じての感染・発症もあります。

  ノロウイルスには多数の遺伝子型が存在するため、同じ人が複数の違った型のウイルスに感染することがあります。また、感染が腸粘膜での局所感染なので免疫の持続時間が短いことも特徴です。したがって、一度かかったからといって安心していると、何回でも罹る(再感染)ことがあります。予防には気をつけましょう。

 

症状

 

  1〜2日の潜伏期の後、嘔吐・下痢・発熱などで発症します。突発的な激しい吐き気や嘔吐が特徴で、下痢、腹痛、悪寒、38℃程度の発熱も認めます。嘔吐の数時間前から胃に膨満感やもたれを感じる場合もあります。これらの症状は通常1~2日で治癒し、後遺症が残ることはありません。ただし、免疫力の低下した老人や乳幼児では下痢による脱水をきたすことがあり注意が必要です。また、吐物を喉に詰まらせることによる窒息による死亡の報告もあります。

 また、感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や風邪症候群と同様の症状が現れるのみの場合もあります。このような場合、一般に「嘔吐、下痢、腹痛を伴う風邪」と表現されます。しかし、実際はノロウイルス属による感染症であった訳です。これらの場合でもウイルスによる感染は成立しており、糞便中にはウイルス粒子が排出されているため、注意が必要です。

 

感染経路

 

 このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、その感染経路から以下に大別できます。

 

■ノロウイルスに汚染された食品からの感染( 経路1、経路2の一部)

  • ウイルスに汚染された牡蠣や二枚貝などを十分に加熱しないで摂取した場合。
  • 感染者が調理してウイルスに汚染された食べ物を摂取した場合。
  • ウイルスに汚染された井戸水や水道水を消毒不十分な状態で飲んだ場合。

 

ヒトからヒトへの感染(経路2、経路3)

  • 感染者が十分に手を洗わず調理した食品を食べ感染。(エタノールや逆性石鹸に対する抵抗性があり、水道水に含まれる塩素にもある程度の耐性を持っているため、洗浄が不十分になりやすい)
  • 感染者の糞便や吐瀉物から便器や手指を介して感染。(ドアのノブなどからもウイルスが発見される事例がある)
  • 感染者の糞便や吐瀉物に排出されたウイルスが付着し、飛散した飛沫から空気感染。(飛沫感染或いは塵埃感染とも呼ばれる)

 

 

 

治療

 

 ノロウイルスには有効なワクチンや抗ウイルス薬はありません。また、抗生物質も効きません。対症療法が行われます。乳幼児や高齢者では脱水をおこしたり体力を消耗しないよう、充分に水分と栄養の補給を行ってください。下痢や嘔吐による脱水症状が強い場合は点滴が必要となります。

 
 原則として
下痢止めは使いません無理に下痢を止めるとウイルスの排除が遅れ、病気からの回復を遅らせるからです。

 

感染予防

 

 ノロウイルスは、衣服や寝具・家庭用品・家具などの表面で数週間生存することができるため、感染経路の遮断には手洗いや器具の洗浄が必須です。また、アルコール(75%エタノール)では不活化されません(*)。
 
*ノロウイルスはエンベロープ(脂質からなる2重膜)を持っていません。エンベロープはその大部分が脂質から成るため、エタノール・有機溶媒・石けんなどで処理すると容易に破壊することができます。しかし、エンベロープを持たないノロウイルスは消毒用アルコールでの不活化が困難です。

  • カキなどの二枚貝は中心部まで十分に加熱(85℃~90℃で90秒間以上)してから食べましょう。湯通し程度の不十分な加熱ではウイルスの感染力は失われません。
  • 生鮮食品(野菜、果物など)は十分に洗浄しましょう。
  • トイレの後、調理をする際、食事の前にはしっかり手を洗いましょう。
  • 手洗いの後、使用するタオル等は清潔なものを使用しましょう。

 

二次感染を予防するために  家庭や保育園、学校などでは…

 

  • 感染者の便、嘔吐物には接触しないようにし、接触した場合は十分な洗浄と消毒を行いましょう。
  • 嘔吐物や、糞便で汚れた衣類等を片付けるときは、ビニール手袋、マスクなどを用いましょう。
  • 嘔吐物や、糞便で汚れた衣類等は他の衣類とは分けて洗いましょう。
  • 嘔吐物などを片付けた用具、雑巾類は、塩素系漂白剤(*)でつけ置き洗いをしましょう。
  • 嘔吐物などで汚れた床は、塩素系漂白剤(*)を含ませた布で被い、しばらくそのまま放置して消毒しましょう。
  • 物の片づけが終わったら、よく手を洗い、うがいをしましょう。 

 

リンク(ノロウイルス予防マニュアル)

 

 ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)
  ノロウイルス予防 北海道.pdf
 家庭でできるノロウイルス消毒法 東京都.pdf
 ノロウイルス対応標準マニュアル東京都.pdf