頭痛の原因は様々です。素人判断では危険な場合があります。
まずはご相談を!
頭痛(headache,cephalalgia)といっても、命が脅かされるような危険な頭痛から、そうでないものまで多種多様です。頭痛は脳に異常がない一次性頭痛と脳に異常があっておきる二次性頭痛の2つに分類されます。
一次性頭痛は数年以上前から同じような頭痛を繰り返している慢性頭痛(いわゆる頭痛持ちの頭痛)で、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛がその代表です。命には別状ありませんが、日常生活に支障が出るなど困った頭痛です。
二次性頭痛は急におこった頭痛で、これまでに経験がないひどい頭痛、突発して短時間でピークに達するような頭痛、熱がある、手足の麻痺やしびれを伴うような場合はくも膜下出血などの脳出血や髄膜炎などの可能性もあり注意が必要です。また、数週間のうちに悪化してくるような場合には脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの可能性もあります。二次性頭痛は緊急性が高く場合により命に係わる危険のある頭痛です。
日常臨床においては、「緊急性が高く」「危険な」二次性頭痛→その他の二次性頭痛→一次性頭痛→まれな一次性頭痛の順に考えます。
☛ 一次性頭痛へ
1)突然発症の頭痛(数秒以内にピークに達する頭痛)
2)今までに経験したことがない人生最悪の頭痛
3)頻度と程度が増していく頭痛
4)いつもと様子の異なる頭痛
5)50歳以降に初発の頭痛
6)神経脱落症状(言語障害や手足の麻痺など)や視力障害を有する頭痛
7)妊婦、癌や免疫不全の病態を有する患者の頭痛
8)精神症状を伴う患者の頭痛
9)発熱、項部硬直、髄膜刺激症状を有する頭痛
10)咳、労作、性交、Valsalva手技(息こらえなど)で増悪、体位で変化する頭痛
■くも膜下出血(SAH、subarchnoidal hemorrhage)
- 発症すると1/3が亡くなり、1/3が後遺症を残し、残り1/3が後遺症なく回復するといわれている。
- 突然発症、人生最悪の頭痛ではまずSAHを考える。
- 雷鳴頭痛の多くは数秒以内であるが、長くても1分以内にピークに達するものを言う。くも膜下出血がその代表だが片頭痛や脳静脈洞血栓症、椎骨/内頚動脈解離、小脳梗塞、下垂体卒中、可逆性脳血管攣縮性症候群などの見逃せない頭痛をきたす疾患のこともある。
- 突発する激しい頭痛を訴える場合はSAH患者の80%。救急車で運ばれてくるケースが多いが、出血量が少なければ歩いて外来を受診するケースもある(Walk in SAH)。
- 軽度の頭痛に加え、めまい、嘔気・嘔吐、意識障害などで発症することもある。「意識がしっかりしている(意識清明)」場合や、全く頭痛を訴えない場合もあり注意が必要。
- 患者の10~50%はSAH発症前に警告頭痛がみられることがある。多くは1分以内にピークに達し1時間以上持続するが、24時間以内に消失することが多い。
- 頭痛診療においては「いかにSAHを見逃さない」ことが大切。
- 突然で今まで経験したことがないような激しい頭痛がある場合は、すぐに医療機関を受診してくだい。
- 一見するとクモ膜下出血ではなさそうと思えても、実はそうだった! ということも多々あります。
- SAHが心配な方は脳神経外科に相談してください。
■脳動脈解離
- 椎骨脳底動脈解離と内頚動脈解離がある。本邦では4:1と椎骨脳底動脈解離が多い。
- 突然発症の片側の後頭部~後頚部痛で発症する。
- 頸部の外傷、頸部の回旋や伸展を伴う美容院でのシャンプーやカイロプロテック、スポーツなどで頸部の運動に引き続いて起こることもある。
■髄膜炎、脳炎
- 増悪する今までに経験したことがない頭痛
- 咳や歩行で響く頭痛
- 発熱、嘔気、意識障害、頸部光過敏、音過敏
- ウイルス性と細菌性がある。
■脳出血
- 高齢の高血圧患者の急性発症の頭痛と局所神経症状が特徴。
- 症状は出血の部位や出血量により様々。頭痛・吐き気・めまいなどの自覚症状や意識障害、手足の麻痺、口のもつれや言葉の障害などがある。
- 基礎疾患としては高血圧が最も多く、約6割が高血圧性とされている。非高血圧性のものは脳血管の変性に伴うもの、脳血管の奇形によるもの、脳腫瘍からの出血、抗血栓薬などの薬剤の影響によるもの、腎不全や血液疾患などの他疾患をベースに起こるものなどがある。
- 高血圧のない若年患者(<40歳)では動静脈奇形、動脈瘤破裂を考慮する。
- 単純CTおよびMRIの診断感度は高くほぼ100%。
■脳静脈洞血栓症
- 脳静脈洞は脳中を灌流してきた血液が、頭蓋から出ていく前に、最後に集まってくるところ。別の言い方をすれば、頭蓋外へ出ていく血液の主な通り道(出口)ともいえる。
- 静脈洞血栓症では、静脈洞が血栓で閉塞することにより、血液が頭蓋外に出て行きにくくなり、頭蓋内圧亢進(頭痛)、静脈性脳梗塞、脳出血、けいれんなどを起こしてくる。
- 頭蓋内の静脈洞のうち、大脳表面を灌流した血液の主な戻り道になる上矢状静脈洞の血栓症が最も多く、次いで横静脈洞、海綿静脈洞の血栓症の頻度が多いとされる。
- 原因は感染症、糖尿病、脱水、妊娠、経口避妊薬、外傷、開頭手術後、悪性新生物、血液凝固能亢進状態などが報告されているが、原因が分からない場合も少なくない。
■脳腫瘍
- 脳腫瘍には原発性脳腫瘍と他の部位に発生した癌が転移してできた転移性脳腫瘍とに分けられる。
- 症状は大別すると、①腫瘍の発生・増大によって頭蓋内の圧力が高まることによる「頭蓋内圧亢進症状」、②腫瘍自体が脳細胞を直接圧迫することによる「局所症状」、③圧迫や障害によって神経細胞から興奮物質が放出されて起こる「けいれん発作」の3つ。
- 頭蓋内圧亢進症状の具体的な症状としては、慢性的な頭痛、原因不明の吐き気や嘔吐、視力低下がある。
- 夜間睡眠中は呼吸が抑制され体内に二酸化炭素(CO2)が蓄積されることで脳血流が増加し頭蓋内圧が上昇。そのため、早朝覚醒時に認め、その後次第に軽快する頭痛(起床時頭痛)が多い(註)。
- 嘔吐はほとんどの場合が噴射状で、吐いてしまうと頭蓋内圧が下がるため、「あとはスッキリ」する場合が多い。ただ、頭蓋内圧がさらに高まると、意識障害や呼吸障害に陥る危険性もある。
- 註)起床時頭痛(morning headache)は脳腫瘍以外にも睡眠時無呼吸症候群(SAS)や夜間低血糖、緊張性頭痛、側頭動脈炎でも認められる。また、アルコール、カフェイン、一酸化炭素(CO)や睡眠障害(過剰睡眠、睡眠中断・不足)、慢性疼痛、うつ病などでも生じる。
■下垂体卒中
- 下垂体にできた腫瘍(腺腫)に出血や梗塞が生じて起きる。
- 下垂体容積が増大することで視野欠損や複視、眼瞼下垂、瞳孔散大や頭痛や嘔気を認める。突発する頭痛でくも膜下出血との鑑別が必要。
- 続発する副腎不全や中枢性甲状腺機能低下症を合併すると徐脈性ショックや低血圧を伴った頭痛との鑑別診断に苦慮する。
■高血圧脳症
- 急速発症の頭痛、嘔気・嘔吐、視力障碍、けいれん、意識障害
- 発症前数日より頭痛、めまい、視力障害があることが多い。
- 長期の高血圧患者では220/110㎎Hg以上、正常血圧者では160/100㎎Hg以上が多い。正常血圧のこともある。
- 血液脳関門の破綻による。
■急性緑内障発作
- 失明の原因の第一位は緑内障。
- 緑内障は多くの場合、眼痛や頭痛などの自覚症状はない。
- 急性緑内障発作では「目と目の周り(特に目の上部)」の痛みと放散痛としての頭痛をきたすことがある。
- 緑内障発作の前に「目が重たい」「目がかすむ」「光の周りに虹のようなものが見える」といった前触れの症状がある。
- 放置する短時間で(球速に)失明することもある。
■慢性硬膜下血腫
- 硬膜下血腫は急性(受傷後24時間以内)、亜急性(受傷後1~14日)、または慢性に分けられる。
- 硬膜下血腫の危険因子:頻回の転倒、アルコール依存症、抗凝固剤(ワーファリン、直接作用型抗凝固剤DOAC、アスピリンなど)
- 急性および亜急性の硬膜下血腫は病歴が判明しているため通常は診断上の問題にはならない。
- 慢性硬膜下血腫は受傷後数週~数か月して微細な症状を呈し診断が困難なことがある。
- 高齢者および脳の委縮した患者にみられることが多い。脳委縮があると徐々に増大する血腫にも順応できるため症状が分かりにくい。
- 高齢者では頭部外傷歴を確認することはしばしば困難なことがある。
■CO中毒
■CO2ナルコーシス
■側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
- 50歳以上の高齢者に発症する大動脈とその主要分枝の原因不明の血管炎。主に内頚・外頚、椎骨、鎖骨下動脈の枝が侵される。頭の浅側頭動脈が侵されるためこの名で呼ばれている。
- リウマチ性多発筋痛症(PMR)の15~30%に側頭動脈炎を合併する。また、側頭動脈炎の50~90%にリウマチ性多発筋痛症を合併する。
- 頭痛は両側の側頭部や後頭部の拍動性の痛みで側頭動脈の圧痛を認めるこことがある。
- 咀嚼筋や側頭筋の血流が障害され顎跛行(jaw claudication)をきたすことがある。
- 眼動脈が侵されると視力障害をきたし、進行すると失明の危険もある。
■褐色細胞腫
- 副腎髄質やその周囲の神経節にできる腫瘍で、カテコールアミンと呼ばれるホルモンを過剰につくり出し、二次性高血圧(ほかの疾患が原因で起こる高血圧)や糖尿病などの原因となる。
- 褐色細胞腫では、カテコールアミンが過剰に分泌されて高血圧や急激な血圧の変動を起こし、その結果として、頭痛、動悸、吐き気、異常な発汗、不安感といった症状をもたらす。
- 褐色細胞腫の90%が良性腫瘍で手術による摘出で治癒する。悪性の場合は骨、肝臓、肺に転移し、心不全や腸閉塞などを合併することがある。
■低髄圧症候群(脳脊髄圧痛漏出症)
- 座位・立位で増強する頭痛、臥位で改善
- 嘔気、耳鳴り、めまい、倦怠感
- 外傷、腰椎穿刺の既往
■帯状疱疹
- 片側のピリピリした疼痛、時に皮疹が認められないときがある
- 免疫不全
■睡眠時無呼吸症候群(SAS)
■低血糖
■貧血