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糖尿病患者の死因 |
日本糖尿病学会では日本人の糖尿病患者の死因や死亡時年齢の大規模な調査を行っています。1971年から始まり10年ごとに調査結果が報告されています。今回、4回目で最新となる2001~2010年の調査結果が報告されました(2016年5月)。
アンケート調査方式で全国241施設から45,708名の糖尿病患者の死因が分析されました。死因第1位は悪性新生物(がん)38.3%で、第2位は感染症(17.0%)、第3位は血管疾患(14.9)でした。
2010年の日本人一般の死因のうち悪性新生物が29.4%でした(厚生労働省)。したがって、この「38.3%」の意味することは、糖尿病患者はがんに「なりやすい」ということです。さらには、「致命的になりやすい」といえるかもしれません。悪性新生物の中で最も多かったのは肺がんで、次いで肝がん、膵がんでした。前回第2位だった肺がんが1位だった肝がんを抜き、第1位となっています。
第2位の感染症の中では肺炎がほとんどを占めました。第3位の血管障害の中では、慢性腎不全が3.5%に対して虚血性心疾患4.8%、脳血管障害6.6%でした。虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞でした。脳血管障害の中では、脳梗塞が脳出血の1.7倍と高率でした(図1)。
年代別死因 |
年代別死因として血管障害全体の比率は30歳代以降で年代による大きな差は認められませんでした。糖尿病腎症による慢性腎不全は30歳代で、心筋梗塞は40歳代で、脳血管障害は30歳代で比率が増加し、それ以降の年代においては同程度でした。50歳代までは脳出血、60歳代以降では脳梗塞が高率でした。
悪性新生物(がん)の比率は50歳代で46.3%、60歳代47.7%と高率で、50~60歳代では二人に一人ががんで亡くなっていることになります。50歳代以降での悪性疾患による死亡者全体の97.4%を占めていました。
感染症の中で肺炎による死亡比率は年代が上がるとともに高率となり、70歳代以降では20.0%で、肺炎による死亡の80.7%は70歳代以降でした。
血糖コントロールの良否との関係 |
生前の血糖コントロールが良好だった群と不良だった群の平均死亡時年齢を比較すると、コントロール不良群が良好群より1.6歳短命でした。そのうち、糖尿病腎症(腎不全)死亡例で4.7歳、心筋梗塞死亡例で3.1歳、不整脈死亡例で5.0歳短命で、コントロール不良群で大きな差が認められています。一方、悪性新生物死亡例や感染症死亡例での差はわずかでした。
糖尿病患者の死因の変遷 |
糖尿病患者の死因の変遷を日本人一般と比較すると、悪性新生物の割合は1970年代から1990年代まで日本人一般、糖尿病患者とも上昇し続けていました。2001~10年では日本人一般で上昇が止まったのに対して、糖尿病患者ではさらなる上昇(38.3%)がみられています。
前回3位であった感染症(14.3%)が同2位であった血管疾患と入れ替わり、2位となっています。
血管障害の割合は1970年代以降、日本人一般、糖尿病患者ともに低下してきたが、低下の勾配は糖尿病患者の方が急峻でした。2001~10年では血管障害の割合は糖尿病患者が日本人一般を初めて下回っています。死因に占める虚血性心疾患の割合も同様で、2001~10年で初めて糖尿病患者が日本人一般を下回わりました。
糖尿病患者の平均寿命 |
今回の調査における糖尿病患者の平均死亡時年齢は男性71.4歳、女性75.1歳で、日本人一般の平均寿命に比べてそれぞれ8.2歳、11.2歳短命でした。しかし、前回(1991~2000年)に比べ、男性で3.4歳、女性で3.5歳延びています。これは、日本人一般の平均寿命の延び(男性2.0歳、女性1.7歳)より大きくなっています。
この調査結果を報告した中村氏は「第1回の調査が行われてから30年が経過した。その間の糖尿病管理、治療法を含めた医療技術の進歩が糖尿病患者の生命予後の改善につながっている可能性が、ようやく明らかになった」と分析しています。