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虫垂炎の痛み

 

 

 

 

たかが虫垂炎、されど虫垂炎

 

 虫垂炎50歳以下で緊急手術になる急性腹症※1)の中で最も頻度が高い疾患です。ただし、見逃されやすい疾患の代表でもあります。その原因として「虫垂炎=右下腹部痛」「虫垂炎=持続痛」という「思い込み」があるようです。

 

■初期症状

 

 虫垂は結腸の始まりのである盲腸から芋虫の様にぶら下がっており「虫垂突起」とも呼ばれ右下腹部に位置しますが、虫垂炎の初期は右下腹部痛で始まる訳ではありません。通常は心窩部(みぞおち)か臍周辺の痛みから発症します。

 

 虫垂開口部が炎症や異物(糞石など)で閉塞すると虫垂管腔の内圧が上昇します。その刺激が内臓求心性神経を介して関連痛として心窩部や臍周囲の鈍痛(漠然とした痛み)が生じます。

 

 そして、内臓痛のため悪心・嘔吐、食欲不振といった症状も伴います。

 

■進行期症状

 

 その後、虫垂の管腔粘膜に炎症が起きる痛みは右下腹部へと移動しは持続的な鈍痛となる。

 

 そして、炎症が虫垂管腔の内側から臓側腹膜に波及して右下腹部の持続的な鋭い痛みとして体性痛が発生する。

 

 さらに進行すると、発熱や白血球の増多が認めれれる様になります。

 

■症状出現順序は虫垂炎診断のポイント

 

 この心窩部痛、悪心・嘔吐、食欲不振や右下腹部痛、発熱などの発生順序が虫垂炎の診断において極めて重要です。

 

 典型的な虫垂炎では、まず①心窩部・臍周辺の漠然とした痛みから始まり、その後②悪心、嘔吐、食欲不振が出現、③そして右下腹部に痛みが移動します。④発熱、⑤白血球増多・炎症反応陽性が認められるのはその後です。

 

 胃腸炎では腹痛の前に悪心・嘔吐が先行することが多く、虫垂炎との鑑別点となります。

  •  虫垂炎:心窩部・臍周辺痛 ⇒ 悪心・嘔吐 ☞ 右下腹部痛
  •  胃腸炎:悪心・嘔吐 ⇒ 腹痛

 

 

■小児、高齢者、妊婦の場合

 

 2歳未満の小児や、高齢者、妊婦などでは、右下腹部の限局化やそれに先行する心窩部・臍周辺痛がなかったり、発熱などが認められないことがあり注意が必要です。

 

  • 小児:乳幼児は虫垂の開口部がラッパ状に広いので内容の排泄(はいせつ)がよく、虫垂炎は少ないとされています。しかし、症状が典型的でなく(訴え・症状が分か難く)かぜなどの症状と思ってるうちに腹膜炎となっていたりする診断のむずかしい症例もあります。
  • 高齢者:症状がはっきりせず、白血球増多や発熱もあまりみられません。
  • 妊婦:妊娠の時期により虫垂の位置が高くなることを考慮して診断されます。また、大網という腹部の脂肪膜では炎症が囲まれにくいため、腹膜炎になることも多いといわれます。妊娠初期は流産に注意しなければなりません。

 

虫垂炎の身体所見

 

 右下腹部の圧痛点や反跳痛や筋性防御などの腹膜刺激症状は虫垂炎を疑ったり診断する有用な身体所見となります。

 

■圧痛点

代表的な圧痛点です(下図)。

 

 

■腹膜刺激症状

  • 筋性防除(voluntary] guarding):痛みを自覚しているために、「触診時に痛みを和らげようとして自分の意思で」腹筋に力をいれて防御する所見。
  • 反跳痛(rebound pain):圧痛点付近を圧迫して急に放すと疼痛が増強する所見。炎症が腹膜まで進展していることを示唆する。
  • 筋硬直(rigidity):腹壁の腹膜に激しい炎症があると,同部位の筋肉「患者の意思にかかわらず」反射的収縮を起こして常に力の入った硬い状態となっていること.腹膜に強い炎症が持続的に及んでいることを示す重要な所見である。

 

  • Heel drop sign(踵落とし試験): つま先立ちをした後、踵を床に勢いをつけて落とすと痛みが出現する所見。

 

 

色々ある心窩部痛(みぞおちの痛み)の原因

 

■消化器以外

  • 狭心症・心筋梗塞 腹部大動脈瘤破裂、解離性大動脈瘤

 

■消化器

  • 食道:逆流性食道炎、
  • 胃・十二指腸:急性・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃アニサキス症、機能性ディスペプシア
  • 腸:急性虫垂炎の初期、腸閉塞
  • 肝:急性・慢性肝炎、肝硬変、肝腫瘍(肝がん)
  • 胆膵:急性・慢性膵炎、膵がん