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胸焼け・げっぷ

 

 

 

胸焼け・げっぷとは

 

 胸やけ(heart burn)とは胸骨下部の背面から心窩部にかけて感じる灼熱感を伴う不快な感覚のことをいう。多くの場合、胃酸の逆流による食道粘膜の刺激により生じ、食後や臥位によって増悪する場合が多い。

 

 げっぷとは曖気、おくび(eructation、belchingまたはructus)と同義語で、胃の中にたまったガスが口外に出ることをいう。げっぷ自体は生理的・日常的現象であり、それが単独で訴えられることは少ない。げっぷはそれが頻回に起こる場合、あるいは胸やけやこみ上げてくる感じと同時に発生する症状として訴えられる.

 

 呑酸とは胃から食道・口腔へ逆流することで喉や口腔内が「酸っぱい」と感じる症状である。

 

 反芻は嚥下した食物が胃酸による粥状化を受けずに口腔内に少量戻ってくる現象のことである。

 

■患者の訴え方

 

 「胸やけ」は医学用語の中では比較的一般的に使用され、またそれが上部消化管に関係する症状であることも広く知られている。したがって、具体的な症状よりも「胸やけがする」と表現されることが多い。ただし実際は、次の様に表現されることもある。

  • 食後に酸っぱいものがこみ上げてくる
  • 胸が熱い
  • 胸が灼ける
  • 胸がつかえる

 

胸焼け・げっぷの原因・疾患

 

 ■胸焼けの原因

 胸やけの病態は単純ではなく、さまざまな因子が組み合わさって生じる食道粘膜の刺激および運動障害と考えられている。

 

 従来、胃酸を含んだ胃内容物が食道に逆流することによる食道下部粘膜の刺激症状が胸やけの機序と考えられてきた。しかし、明らかな酸逆流がなくても胸やけは生じることがわかっており、十二指腸液の逆流や食道粘膜の感受性の亢進などが機序として考えられている。

 

 胃内容物の食道への逆流は食道・胃の消化管運動機能の異常ととらえることができる。下部食道括約筋(lower esophageal sphincter; LES)により胃内容の食道への逆流防止機構が存在する。しかし、その障害すなわちLES圧の低下によって病的逆流が生じる。胃内容の停滞、胃運動の亢進、腹腔内圧の亢進も胃食道逆流(gastroesophageal reflux; GER)の原因となる。

 

 さらに、食道粘膜傷害の発生においても消化管運動機能異常が関与している。健常者でも胃食道逆流はみられ食道の蠕動運動により速やかに逆流液は胃へと移動する。胃・食道蠕動運動に異常があり酸クリアランスが低下すると食道粘膜傷害が生じる。すなわち、“胸やけ”とは消化管運動機能の異常に伴う症状であるといえる。

 

 このような病態を生じる疾患として,表3-137[表]に示すように器質性疾患として胃・食道病変が挙げられる.それらが除外された場合,機能性疾患も考慮に入れなければならない.LES圧の低下が関与している場合がほとんどであり,その原因を表3-138[表]に示す.食道痙攣によるもの,薬物・食物による食道粘膜の直接傷害によるものなどは,LES圧の関与がなくても起こりうる.

 

■胸焼けをきたす疾患

胃食道逆流症(GERD)

 

食道・胃運動機能障害

 

各種の食道刺激

 

下部食道粘膜の炎症

 

 

■ゲップ

 げっぷの原因の大部分は,LES圧の弛緩に伴って胃内のガスが食道を通って口腔内に上昇し、排出される状態である。

 LES圧の低下は胸やけの原因の1つであり、げっぷも一連の症状である。LES圧の低下により胃内容が食道へ逆流する際に生じる。胃内から食道,口腔を通じた口外へのガスの排出がげっぷである。したがって,この2者の病態および疾患は深く関連している。

 

胃食道逆流症

 

過剰な空気の嚥下

 

細菌によるガス発生

 

消化管狭窄

 

胸やけとげっぷの原因は、ほとんどの場合は上部消化管疾患である。

ただし、「胸やけ」は狭心症・心筋梗塞による胸痛を「胸焼け」と感じることもあり注意が必要である。

これらの胸痛が否定された後、上部消化管疾患を念頭において鑑別を行う。

頻度は高くないが悪性腫瘍の存在は重要であり、全身状態にも十分注意を払う必要がある。

 

診断のポイント

 

■経過

以前から上部消化管疾患を指摘されていたかどうか

妊娠の可能性は?

■誘因

労作との関係は?

食事との関係(食後、食事内容)

ストレス

■全身状態

食欲低下、体重減少は?

腹痛、悪心・嘔吐を伴っているか?

嚥下困難を伴っているか?

■生活歴

食生活

■嗜好品、常用薬

アルコール、喫煙、常用薬