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糖尿病腎症

 

 

糖尿病腎症とは

 

 糖尿病腎症は糖尿病による細い血管の障害(細小血管障害)の代表的疾患の一つです。持続的な血糖値上昇(高血糖)や糖尿病に合併しやすい高血圧により腎臓の働きが悪くなった状態をいいます。

 

 慢性腎臓病(CKD)の最も重要な疾患の一つで、進行すると末期腎不全に陥り、透析療法腎移植が必要となります。1998年以降、新規透析療法導入の原因疾患の第一位(43.5%、2014年)。2011年以降透析療法の原因疾患の第一位。

 

 アルブミン尿の出現により診断される糖尿病腎症を有する患者の大多数は、腎不全が原因で死亡(腎死)するのではない。脳梗塞や心筋梗塞などの大血管障害のリスクが高くなり、これらの疾患で死亡する。腎症がなければ糖尿病患者の死亡率は一般の人と同じとされる。

 

 

 

腎臓の働き

 

 腎臓には毛細血管が毛玉のように集まった糸球体が、血液をろ過して老廃物を尿へと排泄。

 

 

 

糖尿病腎症になると

 

  • 糸球体の機能が低下し、たんぱく質など体に必要な成分が尿に漏れ出たり(たんぱく尿)、不要(有害)な老廃物が体内に残る(尿毒症)
  • ある程度進行しないと症状は出ない
  • 症状が出た時は、かなり進行した腎症になっている

 

糖尿病腎症の症状

足のむくみ

血圧上昇(高血圧)、

貧血

骨が脆くなる(骨粗鬆症)

尿毒症

 だるさ

 食欲不振

 頭痛

   …

 

 

腎症予防のため改善が必要な生活習慣

 

■高血糖

  • 糖尿病腎症の発症・進展の第一の要因
  • 糖尿病の初期から厳格な血糖コントロールにより腎症の発症や進行を遅らせる
  • 腎症予防のための血糖コントロール目標:HbA1c70%未満
  • 低血糖を避ける

*)ただし、個々の状態・事情に応じて目標は変動する

■高血圧

  • 腎症の第二の要因
  • 十分な降圧は腎症の発症や進行を遅らせる
  • 糖尿病での降圧目標:130/80未満(家庭血圧125/75未満)

*)糖尿病のない場合の降圧目標は140/90未満(家庭血圧135/85未満)

■アルブミン尿、蛋白尿

  • アルブミン尿が出た時点で早期腎症(第2期)
  • 持続的蛋白尿が出るようになると顕性腎症(第3期)
  • アルブミン尿、蛋白尿が出現すると腎症の進行が加速される
  • また、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の発症リスクや死亡リスクも上昇する

■食塩摂取制限

  • 血圧のコントロールは腎機能の悪化を抑制
  • 減塩により降圧剤の効果が高まる
  • 高血圧がある場合、第3期腎症以降は6g/未満に制限

■カリウム制限

  • 腎症第3期で高K血症があれば0g/日未満、第4期1.5g/日未満、第5期で血液透析2.0g/日未満に制限(腹膜透析では原則制限不要)

■たんぱく質制限

  • 腎症第3期(顕性腎症期)でGFR<45以降ではたんぱく質制限が必要
  • 厳しいたんぱく制限は困難なことが多く、現実的には0.8g/kg標準体重/日程度が推薦されている

■運動

  • 血糖値の低下、インスリン抵抗性改善、減量、血圧低下、筋肉量減少の予防、心肺機能向上、骨粗鬆症予防などの効果がある
  • 腎症第4期では散歩やラジオ体操、第5期(透析療法中)では軽運動に留める
  • 最近の研究では、眼底出血や足病変(壊死)など特別な場合を除き運動制限の必要はないとされる
  • いずれにせよ、過度の運動制限は好ましくない

■肥満・脂質異常症

  • 肥満や脂質異常の解消は血圧を下げ脂質代謝を改善し、糖尿病および腎症の発症・進展を防止する

■飲酒

  • 糖尿病患者では飲酒は食事療法の妨げとなり、血糖管理を悪化させることが多い
  • 多量飲酒は血圧を上昇させ、低血糖のリスクを高める
  • 少量(適量)の飲酒は可

■喫煙

  • 肺がんや心血管障害のリスクのみならず、腎症を発症・進展を促進する
  • 糖尿病や腎症を有する人のみならず、すべての人にとって喫煙は「百害あって一利なし」