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糖尿病網膜症

 

 

 

糖尿病網膜症とは

 

 高血糖(血糖値が高い状態)が長期間続くと、目の網膜に栄養を送っている細い血管(細小血管)の流れが悪くなったり詰まったりする。その結果、タンパク質や赤血球が血管外に漏れでるようになる(白斑、出血)。さら進行すると失明※1)することもある(失明原因の第2位)。

 

 

※1)失明

  • もともと見えていた人が病気やケガで視力を失うこと。
  • 社会的失明:目を使っての仕事ができなくなる程度の障害。目の前1mでかざした指の本数が分からない(視力0.02未満)
  • WHO:良い方の目の矯正視力が05未満。

 

 

初期は自覚症状がない網膜症

 

          

 

ものが見える仕組み

 

 

 目に入った光は、角膜・水晶体などで屈折し、硝子体から網膜に達した後、視神経を通して脳で認識されます。カメラに例えると、角膜・水晶体はレンズ、光彩は絞り、硝子体はボディ、網膜はフィルム(CCD)に相当。

 

 網膜は、はりめぐらされた血管により栄養を補給され、その働きが保たれています。黄斑は網膜の中心にあり視細胞(光を感じる細胞)が密集し、視力(視覚)のほとんどを担っています。これらのいずれかに問題が生じても視力は障害されます。

 

 糖尿病網膜症は長く続く高血糖により網膜の細い血管(細小血管)が障害されることにより引き起こされます。

 

 水晶体(レンズ)が白く濁ると白内障、光彩(絞り)の障害で緑内障、フィルムが剥がれると網膜剥離となります。

 

 

網膜症の進み方

 

■単純網膜症

  • 最も初期の段階。網膜の細い血管(毛細血管)の一部に小さな瘤(こぶ)や出血や、白斑が出現する。
  • この段階では自覚症状なく視力には影響しない。したがって、眼底検査をしないと分からない。
  • この段階までは血糖コントロールをよくすると網膜症は改善する

■増殖前網膜症

  • 単純網膜症より一歩進行した状態。血管が細くなり詰まったり(閉塞)、血流が悪いところが綿状に白くなる(白斑)。大きめの出血斑もみられる。
  • かすみなどの症状を自覚することがあるが、全く自覚症状がないこともある
  • この段階では血糖のコントロールのみでは改善は困難。多くの場合、網膜光凝固術が必要となる。

■増殖網膜症

  • さらに進行した段階。網膜の血流が悪くなり、酸素が十分に供給されない部分に新しい血管が作られる(新生血管)。新生血管はもろく破れやすい。硝子体に大量の出血をきたすと急激な視力障害が出現する。
  • さらに進行し網膜剥離を起こすと視力が極端に低下する。
  • この段階では手術を必要とすることが多い。たとえ、手術が成功しても日常生活に必要な視力の回復が得られないこともある(失明)
  • この時期になると、血糖の状態にかかわらず網膜症は進行していく。特に年齢が若いほど進行は早く注意が必要。

※)糖尿病黄斑症

  • 網膜症の進行とは関係なく視力が低下(黄斑症)。単純網膜症の段階でも起こることがある。
  • 黄斑は網膜の中心にあり、ものを見るために最も重要な部分。黄斑付近に毛細血管瘤などが多発したり血液成分が染み出たりするなどにより、黄斑にむくみを生じ視力が低下する。

 

 

 

糖尿病から目を守るために

 糖尿病から目を守るためには次の点に注意しましょう。

■よりよい血糖コントロール

 

■精密眼底検査

  • 網膜症は重症になるまで自覚症状が現れず密かに進行します
  • 検査を受ければ早期発見、早期治療が可能
  • 眼科医の精密な眼底検査を定期的に受けてください

■急激な血糖コントロールに注意

  • 網膜症がある程度進行している場合、突然厳格な血糖コントロールを始めると網膜症が急速に悪化することがあります
  • このような場合は少しずつ血糖を下げます

■運動療法の制限

  • よりよい血糖コントロールには運動療法が不可欠
  • ただし、増殖網膜症に進んでいる場合、激しい運動が眼底出血のきっかけになることがあります
  • このような場合は散歩などの軽い運動にとどめます

■糖尿病手帳

  • 眼科、内科での検査結果や治療内容を記載でき、医師同士の連絡にも有用 
  • 受診時にはぜひ携帯を!